ダルビッシュ有の半端じゃないゲームにかける情熱──「コラボをするとしたらユーザーよりも深く知っているくらいにならないと」、「『プロスピA』は生活の一部」、「『パワプロ』のおかげで人間関係が築けた」

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ダルビッシュ有のゲームにかける情熱 「プロスピAは生活の一部」

ダルビッシュ有の半端じゃないゲームにかける情熱──「コラボをするとしたらユーザーよりも深く知っているくらいにならないと」、「『プロスピA』は生活の一部」、「『パワプロ』のおかげで人間関係が築けた」

 世界中から才能が集まるアメリカのメジャーリーグにおいて、間違いなくトップレベルに君臨する世界最高峰のピッチャー、ダルビッシュ有。『プロ野球スピリッツA』画像・動画ギャラリー 高校時代は「松坂大輔以来の怪物」と評され、ドラフト1位で入団した北海道日本ハムファイターズでは2リーグ制以降史上初の5年連続防御率1点台、歴代唯一の通算勝率7割超え。 さらには、プロ入り5年で2度のMVP受賞など驚異的な成績を残し、2年連続となるリーグ優勝を牽引。メジャーリーグ移籍後もアジア人選手として史上ふたり目の最多勝や最多奪三振に輝くなど、偉大な成績を残している。 プロ野球界でいち早くフィジカルの重要性に着目してトレーニングを始め、サプリメントのプロデュースもこなし、競技の壁を超えて後進に大きな影響を与え続けている、日本の歴史上でも屈指のトップアスリートだ。レジェンドと呼ぶに相応しいダルビッシュ選手だが、じつは「大のゲーム好き」だと知っているだろうか? 約262万人のフォロワーを抱えるTwitterアカウント(@faridyu)では、スマホゲーム『プロ野球スピリッツA』(以下、『プロスピA』)に関する内容をたびたび投稿。また、2020年に開設したYouTubeチャンネル「ダルビッシュのゲームチャンネル」では、『プロスピA』実況動画を多数アップしている。 重課金や長時間プレイをいとわず、『プロスピA』全国大会の優勝経験者たちと交流し、凄腕の彼らからして「ダルビッシュさんはガチでうまい」と評されおり、『プロスピA』とのスペシャルコラボレーション企画「ダルビッシュセレクション」が開催されるなど、ダルビッシュ選手が『プロスピA』を熱心にプレイしていることを示すには枚挙にいとまがない。 超一流のメジャーリーガーであるダルビッシュ選手は、どんなきっかけでゲームが好きになったのか? 『プロスピA』をどのようにプレイしているのか? ゲーマーならば誰もが気になるダルビッシュ選手のゲーム事情について、どうにかインタビューができないものか。弊誌は『プロスピA』の開発・発売元であるコナミデジタルエンタテインメントの協力をいただき、ダルビッシュ選手とコンタクトを取ることに成功。年が明けた1月初旬、オンラインではあるがインタビューを実施することができた。 話題は『プロスピA』のみならず、ゲームとの出会いや学生時代のエピソードにまで広がり、ゲームを遊ぶ際の姿勢にも“ダルビッシュらしさ”が通底していることがひしひしと伝わるインタビューになっている。ゲーマーはもちろん、ダルビッシュ選手のプレイスタイルや独特な思考を知っている野球ファンにとっても読み応えある内容になっているはずだ。文・聞き手/森ユースケ編集/豊田恵吾■全寮制の高校時代にPS oneを持ち込んで『パワプロ』を遊んでいた──スマホゲーム『プロスピA』を筆頭に、ゲームをよく遊ばれているダルビッシュさんですが、NPBのルーキーシーズンに「選手のデータは『実況パワフルプロ野球』(以下、『パワプロ』)で覚えた」と発言した記録がありました。まずはその真偽をお聞きしたいと思っていて。ダルビッシュ有氏(以下、ダルビッシュ): 正直、発言は覚えていないんですけど、『パワプロ』をやっていると選手の名前や球種、能力値を覚えられるので、各選手の特徴を覚えていたというのはあるかもしれないです。──『パワプロ』はいつごろからプレイしていたんですか?ダルビッシュ: 小学校で始めてからプロになったころまで、ずっと熱心にやっていました。最初に遊んだのは、スーパーファミコンの『実況パワフルプロ野球'96開幕版』かな。友だちの家でやったときに自分もほしいと思ってクリスマスプレゼントで買ってもらったのが、たぶんニンテンドー64と『実況パワフルプロ野球5』で。プロに入るまでの野球人生で、野球をずっとやっていたけど、同時に『パワプロ』もずっとやっていました。 『パワプロ』の対戦がきっかけで人間関係を築けた部分も大きかったですし、コナミさんに対しては感謝の気持ちでいっぱいです。──それだけ熱心にプレイしていたゲームですから、自分が初めて登場したときにはうれしい気持ちが強かったのでしょうか。ダルビッシュ: 自分がゲームに登場したときの記憶はないんですよ。でも絶対にうれしかったと思いますよ。コナミのみなさんに査定してもらって、歴代のプロ野球選手と同じところに入るっていうのは、ある種、プロ野球選手として認められたということだと思うので。──『ダルビッシュ有はどこから来たのか』(潮出版社)という評伝には、小学校時代に1ヵ月以上のあいだ、部屋にこもってゲームばかりしていた時期もあったという記述があります。当時はどんなゲームをやっていたのでしょうか。ダルビッシュ: 弟たちはサッカーのゲームをよくやってましたけど、僕はそっちはぜんぜんやらなかったです。本当に『パワプロ』ばっかりプレイしていたんですけど、そのほかには『スーパードンキーコング』の『1』から『3』、『スーパーマリオRPG』……。『スーパーマリオRPG』は、細かなキャラクターは覚えていないんですけど、すごくおもしろかったという記憶があります。あとは小学4年生のときに『ポケットモンスター』が出たので、『赤』を買ってやり込んだ記憶がありますね。──『ポケモン』も遊ばれていたんですね。当時『ポケモン』で好きだったのはどのキャラクターでしたか?ダルビッシュ: ……ミュウかな。伝説のポケモンで、当時は特別な配布【※1】でしかゲットできなかったので、みんなバグ技【※2】で手に入れるしかなかった。でもそのやり方がわからなかったんです。すごく特別感があるポケモンでしたよね。──ダルビッシュさん世代の小学校時代の空気感が蘇ってくるタイトルが並んでいますね。「あのダルビッシュも、『ポケモン』や『マリオRPG』をやっていたのか~」と親近感が湧く人が多いと思います。さて、『パワプロ』に関してもう少し詳しくお聞きしたいのですが、小さいころはテレビでよくジャイアンツ戦を見ていたとのことですが、選手のデータについて「この選手はもっとこの能力が高いのでは」などと感じていたことはありますか?ダルビッシュ: 当時はまったくなかったです。イチローさんのミートカーソルがめちゃくちゃ大きいとか、大魔神・佐々木主浩さんのフォークがめちゃくちゃ落ちるとか、プロのスゴさに興奮して、ロマンを感じながら遊んでいたと思います。──中学時代には全国大会や世界大会でも上位に入り、とくに高校からは全寮制の名門・東北高校で過ごしたなかで、いつゲームをやる時間があったのかと不思議に感じます。……そもそも名門校の寮って、ゲームを持ち込んでもいいものなんでしょうか?ダルビッシュ: 当時、東北高校はテレビやゲーム機、携帯電話の持ち込みは禁止だったんですけど。僕は『パワプロ』が大好きだったので……本体に液晶モニターが接続できるPS one【※】ってゲーム機、覚えていますか? あれを買って寮の部屋でチームメイトと毎日やってました(笑)。野球部はだいたいみんなゲームでも野球が好きなんですよ。──サクセスと対戦、どちらが好きでしたか?ダルビッシュ: 小中高とずっとサクセスもやっていましたし、チームメイトと対戦もやっていました。サクセスはたぶん自分の名前をつけて作ることもあったと思うんですけど、チームメイトの名前で作ることが多かったですね。──この選手は肩が強いから再現しよう、といった楽しみ方ですか?ダルビッシュ: いや、再現するっていうよりは、持っていない球種、たとえばフォークボールの変化量をマックスにするとか、そこまで深く考えずに息抜きとしてやっていたと思います。──作った選手を使って対戦をされたり?ダルビッシュ: 12球団から選んで対戦していたんじゃないかな。やっぱりみんな強い球団を使いたいので、当時ならジャイアンツとか。ああ、ライオンズのカブレラはパワーが半端じゃなかったので、人気がありました。あとはオールパシフィック対オールセントラルの対戦もやっていましたね。 ほかには同じチームどうしとか、フェアな戦いになったほうがいいので、同じくらいの強さでやるようにしていました。──上下関係の強い名門校の寮生活では、先輩が強いチームを使って後輩相手に無双プレイをするんじゃないかと勝手な想像をしていたのですが、そういう感じのプレイではなかったんですね。ダルビッシュ: そうですね。──数多くのスカウトがあったなかから、上下関係が強くないという理由で東北高校を選んだダルビッシュさんらしいと感じます。ちなみに、なるべくフェアな状態で戦いたいという姿勢は、NPBからメジャーリーグへ移籍した際に会見で語った理由【※】に通ずる部分もあるようにも感じますが、いかがでしょうか。ダルビッシュ: うーん……あれは正直リップサービスというか、理由をつけただけなので、本心ではなかったんです。あの発言に関しては、違う話かなと思います。■『プロスピA』のリーグは本当に1日じゅうやっていないとトップ層に入れない──ここからは『プロスピA』の話を聞かせてください。2020年1月7日にアップされた動画「【プロスピ】石川、千賀くんとガチャ引いてみた」以降、プレイ時間が加速度的に増えていき、リアルタイム対戦で「名人」【※1】、リーグ戦では「覇王」の金枠【※2】を獲得されています。 その約半年後にはご自身で監修した「ダルビッシュ有」のデータ作成のほか、ガチャに登場する選手を選んだり、大会のプロデュースをしたりと、『プロスピA』上でさまざまなコラボ企画を開催されていました。 極めつけとなるのが、2020年8月の登板前日の深夜に撮影した動画「登板前夜に俺を救いたい。が、まさかの結末に。」で、トップアスリートが夜遅くまでゲームをやっている姿を見て、多くのゲーマーが親近感を抱いたと思いますが、同時に心配になった野球ファンも多かったかと思います。ダルビッシュ: ちょうど「ダルビッシュセレクション」のガチャが配信されるタイミングが、登板前夜だったので。そのときは深夜1時を過ぎてもまだ動画を撮影していました。──動画内では「支障はないので大丈夫」と話されていましたが、素人からみると「夜ふかしして大丈夫?」……という驚きがありました。ダルビッシュ: まあ、そうですよね(笑)。もちろん翌日の登板がデーゲームなら絶対にやらないですけど、ナイターだったので起きるのは10時か11時。早く寝て、早く起きても試合まで時間がありすぎるので、そのくらいがちょうどいいんですよ。ふだんから、ナイターの登板前日はだいたい深夜1時ごろまで起きていることが多いです【※】。──最近の動画では「リーグをずっとやっていたらしんどくなったので、リアタイ(リアルタイム対戦)に切り替えた」と語っていましたが、実際、多いときには1日で何時間くらいプレイしていたのでしょうか。ダルビッシュ: リーグは本当に1日じゅうやっていないとトップ層に入れないんです。この前、ちょうどセ・リーグの最強決定戦【※】があって、1日じゅうやって100位以内に入れたという感じです。この最強決定戦にエントリーすることを決めたのは、開催2週間前だったので、すべてイチから育成する必要があって。 その2週間に関しては、スクリーンタイムでいうと毎日●時間……記事にするときは数字は伏せてほしいんですが(笑)、半日以上、できるときはつねにプレイする態勢でいないと、トップ層は維持できないんですね。 もちろんウェイトトレーニングなど、野球の練習はしっかり行ったうえでゲームをやっているわけですけど。──リーグに関しては、狙いの選手をゲットして、育成や限界突破を繰り返して極みにし、さらに狙った称号をつけることを繰り返す必要があり、そのためには課金も必要になります。つい先日、動画内だけで100万円以上の課金をしていると報じた記事がありましたが、同じゲームをやっている人からみると、正直、100万円どころではない、のかなと……。ダルビッシュ: あの動画では多村仁志【※】さんを取るのに120万円くらいかかったのかな。それでも、あのときのガチャで出た選手をコンプリートできていなかったので、さらにかかったという。大きなガチャイベントが更新されると、毎回そのくらいはかけていますね。──ここ1年はYouTubeの動画アップ頻度は減りましたが、それでもTwitterではガチャ更新からそれほど時間が経っていないタイミングで、全選手を獲得し、最大レベルの70まで上げたゲーム画面を投稿したりと、かなり時間をかけてプレイしている様子がうかがえます。ダルビッシュ:   選手を揃えて、レベル70にしてようやくスタートライン。リーグをやるにあたっては、すべての数値を完ぺきにしておかないといけないんです。──その熱量の高さでプレイするうえで、どの瞬間がいちばん楽しいですか?ダルビッシュ: 僕がほかのリーグ上位勢と比べて決定的に違うのは、勝ち負けを重視していないことです。僕の場合はピースを埋めていくのが好きというか、『プロスピA』をパズル感覚で楽しんでいて。ほしい選手を揃えたい、限界まで育成したい、狙った称号をつけたい、はめ込みたい。 それができたうえで、最終的に最強決定戦で負けたとしてもあまり気にしていなくて、いちばんうれしいのは、狙った称号【※】が決まった瞬間とかですかね。 スピリッツを上げる「勝利の使者」を狙ったり、じつはいちばん難しいと言われている星2の「コンタクトヒッター」や「ミスターフルスイング」を狙ったり。そういった狙いが決まるとやっぱりうれしいですね。■対戦するよりも、うまい人の動画をみたほうが勉強になる──リアルタイム対戦では、どういったポイントにこだわっているのでしょうか。ダルビッシュ: リアタイでは、とにかく打率を上げるのを目標にして、6割を目指してやっているんですけど、なかなか難しいです。少し前に環境が変わって、5割を超えると“猛者”と言われるレベル、すごくうまい人だと6割3~4分あたりという感じでしょうか。──打率にこだわる理由とは?ダルビッシュ: 6割、7割を打っている人がいるということは、理論的には僕にもできるはず。でもそこに至らないということは、自分のウィークポイントを探して、良くしていけばいい。それは野球でも同じで。そのプロセスがさきほどお話したのと同じ、“ピースを埋めていく”感覚に近くて、好きなんです。 いろいろなYouTuberの方の動画を録画して、ミートカーソルがどんな動きでボールを追っているのかスローモーションで見て、自分と比べて何が違うのかを見ることが多いですね。──『プロスピA』のプレイ動画を配信するYouTuberたちと連絡を取って対戦することもあるんですよね。それはうまい人たちから技術を盗むためですか?ダルビッシュ: う~ん。じつは対戦してスキルの面で得られるものってあんまりないんですよ。その人がプレイしている動画をじっくり見るほうが勉強になります。──では、対戦はあくまでコミュニケーションの一環だと。ダルビッシュ: そうですね。コミュニケーション的な部分もありますし、あとは大会で上位に入るような人たちが知り合いにもいるんですけど、僕が手伝うこともあります。選手層が厚い(たくさんのキャラクターを持っている)ので、練習のために「このピッチャーを使ってもらえますか?」と言われて、手伝う。その代わりにどの選手が強いかなど、ちょっとした情報をもらうっていう感じです。──書籍『ダルビッシュ有の変化球バイブル』(ベースボールマガジン社)など、過去のインタビューでは勝ち負けよりも投げた球の変化や、相手の反応を楽しんでいる部分が大きいと語られていますが、ゲームでも勝ち負け以外の部分を楽しんでいるわけですね。この姿勢は野球でもゲームでもつながっているように感じます。ダルビッシュ: たしかに、言われてみたらそうかもしれないです。プロ野球選手で、勝ち負けをそこまで深く考えないっていうタイプはあまり周りにいない。もちろん僕にとっても勝ち負けは大事だけど、周りの人ほどそこに対する熱意がないのかな、という気もします。『プロスピA』でも、これだけやっているのに勝ち負けをそこまで気にしない人はあまりいない。似ているかもしれないですね。──名声や他人からどう評価されるかという点に興味がないということでしょうか。ダルビッシュ: もちろん気になることはありますよ。なるべく気にしないようにするけど、人間なので若干気になることはある。でもそれ以上に、細かいことを追求するのが好きだっていうことだと思います。──たとえば、トレーニングでも自分の体を鍛えていく過程を大事にされているのですか? 見た目をバキバキに仕上げてコンテストに出るのではなく、あくまで試合で使うための体を作り、その過程を楽しむという。ダルビッシュ: そこは自分でも矛盾があって、最近流行りのファンクショナルトレーニング、実際の野球の動きに近づけたトレーニングで、見た目は気にせずに機能的な体を作るっていうの、好きじゃないんです。どちらかというと、ボディビルダーのような体になりたいという憧れはあります。──以前、奥様の聖子さんの兄である山本“KID”徳郁さんがトレーニングされているときの背中を見て「盛り上がり方がとにかくスゴい」と語っていましたよね。ダルビッシュ: はい、筋肉のつき方がスゴいので、見入っちゃいました。──いつかプロ野球を引退したあとで、ボディビルの世界を目指す、といった可能性もありますか?ダルビッシュ: やりたい気持ちは強いんですけど、骨格的に向いていないし、それ以上に、あの人たちみたいにがんばれないと思うんです。コンテストに出るような人たちって、自分を律して、誘惑に勝って、弱いところも抑え込んでいく。それができる人しかあのようなステージには立てない。僕はそれができる人間じゃないので、単純に憧れの気持ちです。■『プロスピA』はパズルに集中する感覚なので息抜きというより、生活の一部──Twitterでファンの方から「妻の聖子さんはゲームに重課金していることを知っていますか?」と聞かれ、「知らないと思います」とダルビッシュさんは答えていました。以前の動画では「課金しすぎて苦笑いされている」という旨のコメントもされていたと思うのですが、実際のところはいかがなんでしょうか?ダルビッシュ: 妻から課金額を聞かれたことはなかったんですけど、話の流れで「めちゃお金かかってる」と話したところ、「どのくらい?」かと聞かれて伝えたら「マジで……?」という感じで。 そのあと、さらにヤバい額になっていったので、僕も言わないようにして、iPadもサイレントにして課金してました(笑)。 でもちょうど昨日、またそういう話になって、金額を伝えたらそれこそ苦笑いしていましたね。──おそらく累計で数千万円……となると、苦笑いする金額ですよね、きっと(笑)。ダルビッシュ: ただこれには理由があって、「この先にこう活きてくるから」って説明をしたら理解はしてくれました。──その説明というのは、以前話されていた自律神経失調症気味になった際にゲームが息抜きになって復調したというような話でしょうか?ダルビッシュ: いや、『プロスピA』に関しては、大好きなんですけど、パズルに集中する感覚なので息抜きというより、生活の一部ですね。朝起きたらiPadを開いて、状況を見て何をするべきか、コインをどのくらい貯めようか……とひたすら考えています。 やっぱり野球はどこまでいっても仕事のうちという意識になってしまうのかな。は~、ちょっとゆっくりやろうかと思えるのは、『Fortnite(フォートナイト)』だけです。別世界のことだから、息抜きになるんです。──『プロスピA』への課金が「この先に活きてくる」とは、どういうことでしょうか。ダルビッシュ: たとえば先日、eスポーツとして『プロスピA』のプロ選手【※】が誕生して。球団ごとに代表3人が1チームになって、プロ野球のOBが監督になり、大会(「eBASEBALLプロスピAリーグ」、通称スピリーグ)が開催されました。 そのほかにもOBや現役選手を含め、いろいろな選手が公式とコラボをしていて、今後も増えていくだろうと思っています。ゲームにハマってしっかり知っておくことで、もし僕がそういう場に行ったとき、僕のほうが絶対にいろいろと知っているので(笑)。その意味では強みになるだろうし、という趣旨の話をしました。──強みどころか、ダルビッシュさんはプロ野球選手のなかではダントツ最強のはずです(笑)。ダルビッシュ: スピリーグを見ていても、野球関係者のみなさんはすごく楽しんではいるけれど、ゲームのことはそこまでわかっていないじゃないですか。誰の能力がどうで、特殊能力が……といったところまでわかっている人はずっと残ると思うので、そこは大事だなと思います。──『プロスピA』ではご自身が監修した選手・ダルビッシュ有のデータが2種類(2020年と2021年)、『パワプロ』でもみずから監修した“覚醒ダルビッシュ”というデータがあります。このあたりについておうかがいしたいのですが、どのような監修をされたのでしょうか。ダルビッシュ: 『パワプロ』に関しては、スプリームという新しい変化球をつけるということで、「その変化の仕方をデザインしてください」と言われて作りました。 『プロスピA』は、そのときのゲームバランスを考えて、いろいろと設定した感じです。──「自分の能力はこれだ」と再現するのではなく、ゲームバランスを考えて設定したというのは、非常に興味深いです。そのときの環境において、「こんなキャラクターがいたらおもしろい」という観点でキャラ設定をしたということですか?ダルビッシュ: そうですね。2007~2011年あたりの自分はだいたい成績が同じくらい【※】だったんです。変化球もいろいろな球種を投げていたので、どんな設定にしても批判はされないだろうと。たとえば球種が多すぎると言われても、「いや、僕は実際に投げていました」と答えられるので。そのなかで、ゲームバランスを考えて作りました。──『プロスピA』の2020年のデータは、リアルタイム対戦において非常に強力なキャラクターでした。球の回転が似ていて見分けづらい、現環境でのリアタイ必須級と言われているツーシームとスプリットの組み合わせに加えて、同じ方向への変化球かつ変化量の違う2球種という組み合わせ、高速カーブとスラーブを搭載しています。これはリアルタイム対戦を意識した設定なのでしょうか。ダルビッシュ: はい。去年のダルビッシュと今年のダルビッシュは、お互いに干渉しないような、それぞれの良いところを残しつつ、お互いの良さを殺さないようなバランスを意識しました。ここからはちょっとマニアックな話しになっちゃうんですけど……(苦笑)。──ぜひお願いします!ダルビッシュ: 「2020年 シリーズ1」のダルビッシュはスラーブの変化量が6(球威B)でツーシームが球威B。高速カーブ(球威C、変化量2)とスライダー(球威A、変化量3)もある。説明いただいたとおり、リアルタイム対戦で使えるキャラクターだと思います。 一方、「2021 シリーズ2 OBセレクション」のダルビッシュは、高速カーブではなくスローカーブ(球威D、変化量3)になった代わりに、ツーシームがAになりました。スラーブも変化量を2小さくしてあるので、先発としては2020年のダルビッシュのほうが強いんです。 でも2021年版では特殊能力で対ピンチがあるので、それが発動するとツーシームが球威Sになって、しかも中継ぎ適性もある。さらに表ステータスの球威、制球、スタミナを83の全同値【※】で出しているので、リーグにおいては2021年版のほうが強い。それぞれで良さが出るように計算しました。──まるで開発者のように計算し尽くされた設計だったんですね……。ダルビッシュ: まあ、『プロスピA』はずっとやっているので、つねにいろいろと考えてはいます。──ダルビッシュさんが『プロスピA』の全国大会をプロデュースした際、大会レギュレーション【※】を超高速フェードとリアル軌道に設定していました。どのような狙いで、普段の大会とは異なる設定にしたのですか?ダルビッシュ: まず、それまでリアル軌道の大会がなかったので、リアル軌道の初大会を「ダルビッシュチャレンジカップ」でできるのはいいなと思って、そこは狙いました。 同時に、同じ環境での大会が続いていたことでマンネリ化している部分もあると感じていて。どの大会でも同じような人が上位にくるけど、ひょっとしたらその中にリアル軌道は苦手という人がいるかもしれないし、逆にそれまで高い壁に跳ね返されていた人たちの中にリアル軌道なら勝てるという人がいるかもしれない。 新しい脳への刺激にもなるし、いまの環境に新しい風が入ったらいいなと思って、提案しました。──本当の意味でのコラボですよね。プロデューサー、ディレクター目線で、ゲームカルチャーをどう盛り上げるかという視点を持っていることが伝わってきます。ダルビッシュ: 『プロスピA』に限らず、いろいろな方がゲームとコラボしていますけど、コラボする人がゲームについてイマイチわかっていないことも多いですよね。僕自身、いちユーザーとしてそういうのはあんまり好きじゃないんです。 コラボをするとしたら、ユーザーよりも深く知っているくらいにならないと、ユーザーたちがそのコラボを楽しむことが難しいと思うので。■実際の野球とゲームの投球はまったくの別物──新しいガチャでどんな選手が出るのかはユーザーにとって大きなニュースです。「ダルビッシュセレクション」のガチャが実装される前に、ダルビッシュさんは『プロスピA』の配信者に実装される選手のヒント【※】を授け、動画のネタにしてもらうように働きかけをしていましたが、そういったこともユーザーたちが盛り上がれば、という狙いからだったのでしょうか?ダルビッシュ: 僕もYouTubeで動画をあげていた時期があったわけですが、動画のネタを確保するのが難しかったんです。それがわかっていたので、ダルビッシュセレクションのガチャまであと2週間といったタイミングで話題を提供することで、それを動画にしてもらえるんじゃないかと。 球団ごとの選手のヒントを出すことで、たとえば日ハムの選手は誰なんだろう……とたくさんの人を巻き込んで一緒に盛り上がれるかなと。 ヒントを発表するYouTuberの動画を見に行って、その人のことが好きになったり、チャンネル登録をして見続けるかもしれない。そんなきっかけになったらいいんじゃないかと思って、ああいうことを考えました。 自分で動画にしたところで、たとえば20万人の方が見てくれたとしても、入ってくるのは自分のところだけ。でもほかの人にヒントを発表してもらうことで、みんなで盛り上がれて、いろいろな人に良いことが起こるわけですから。──なるほど。ユーザーとして予想動画を拝見していましたが、オリックスの赤堀元之【※1】選手は意外な選出で驚きました。野茂英雄【※2】さんの意見を聞いたとのことですが……。ダルビッシュ: 僕は野茂さんのデータがほしかったんですけど、難しかったみたいで、野茂さんに野手と投手をひとりずつ選んでもらって、色々と考えた結果、赤堀さんに決めました。──ちなみに、野茂さんが選出してデータ化されなかった野手は、どなただったんですか?ダルビッシュ: これ、言っていいのかな? まあ、いいか。左バッターの新井宏昌【※】選手です。ただ、いろいろなバランスを考えて、野茂さんから赤堀さんの話を聞いたとき、ムービングファストを球種に入れたらおもしろいんじゃないかと思ったので。──野茂さんはどんな理由で赤堀さんを推していたのでしょうか。ダルビッシュ: 「近鉄時代に誰がスゴかったですか?」と聞いて、いろいろな選手の名前を挙げていただいたんです。赤堀さんは抑えだったのに規定投球回にのってしまうくらい投げていた、ということでイメージが強かったんじゃないかと思います。シーズン終わりのほうでは、いきなり先発して完封したこともあったんですよ。──赤堀選手は1992年に22セーブで最優秀救援投手(現在の最多セーブ投手)を獲得し、シーズン50登板したうち先発2回で完封が1回6回3失点。抑えの投手ながら規定投球回を達成して、防御率1.80で最優秀防御率に輝いています。たしかに、あの時代の中継ぎや抑えの投手は、1イニングに限らず長いイニングを投げることも多かったですよね。ダルビッシュ: すごい時代に投げてくれた投手がいることで、自分たちの時代につながっているわけですから、ありがたいですね。──ダルビッシュさんのその俯瞰の目線、ものの見方は、実際の野球の監督やGMとしてのマネジメント力にも活きるように感じますが、もし将来そういうオファーがあったら受ける可能性もあるのでしょうか。ダルビッシュ: ……ひとつ重大な欠点があって、僕、野球を9イニング座って見てられないんです(笑)。ずっとプロ野球をやってきたから、飽きちゃうというか。もし3イニングで帰ってもいいのなら考えます(笑)。もう少し年を重ねたら、また気持ちが変わるかもしれないですけど。──それでもいいからとオファーするチームはきっとあると思います(笑)。「3イニングだけの采配」というのも変化が生まれそうでおもしろそうだと感じました。ダルビッシュ: どうですかね(笑)。──ダルビッシュさんが『プロスピA』をプレイした際に、リアルさを感じる部分はあるのでしょうか? たとえばリアルスピードのモードでの投球における、速い球とチェンジアップの緩急などはいかがでしょうか。ダルビッシュ: 野球の投球などに関しては、まったく別物だと思います。メジャーでも打席に立ってボールを見ていますけど、ああいう臨場感を出すことは難しい。もちろんプロの球を打つのはめちゃくちゃ難しいので、そのあたりを再現したらゲームにならないっていうのはあるんじゃないでしょうか。──メジャーリーガーの球と比べるのは愚問でしたね。ダルビッシュ: ただ、ファンの声援や球場の感じ、解説なんかはすごくリアリティがあると思います。そこはいま『プロスピA』というゲームがリアリティを追求するために力を注げる部分なので、そこが再現されているのはいいなと思いますね。──『プロスピA』投球時の「ベストピッチ」【※】がなかなか出せない、もどかしさなどは、実際の野球に通ずるところがあるのでしょうか。ダルビッシュ: うーん、そうですね……。『プロスピA』のベストピッチは慣れればわりと出せるので、違うかな。 でも、球種と投げるコースを決めて、丸いカーソルが真ん中になったときにタイミングよくタップする。その最後の合わせるタイミングがリリースの瞬間だとすると、あのシステムは、実際に球を投げる感覚に似ている部分もあります。 普段投げているなかで、準備をして、足を上げて、腕を動かして、最後のリリースのタイミングでばん! とタイミングを合わせる感覚があるんです。『プロスピA』の投球はそれに少し似ている感覚があるので、あれはおもしろいなと思いますね。──体のさまざまな部分の動きを連動させて最後に力を集約するタイミングや感覚をシステムに表すと、ああいう感じであると。実際に野球をやったことがない状態でゲームをやっている人も親和性を感じますし、システムを作った人が聞いたらよろこぶお話だと思います。ダルビッシュ: もちろん人によって感覚は違うので、狭まってくるタイミングやカーソルの形などはそれぞれ違うんでしょうけどね。──実際の投球では、1試合あたりベストピッチは何球ほどあるんですか?ダルビッシュ: そのときどきでぜんぜん違います。まず「この球がよかった」と自分で感じるのはストレート系統だけなんです。変化球はあまり感覚がないけど、まっすぐだとしっかり指にかかった感触が残る。まあ、まっすぐ、僕は得意じゃないので、1試合で5球もあれば上出来かなと思います。──最多勝も獲得した昨年からは、「急速も上がってストレートもよくなった」とインタビューで語っていましたが……。ダルビッシュ: 力の伝え方がよくなったのかな。メカニクスの部分、いいフォームで投げられていたので、まっすぐも速かったし、コントロールもわりとよかった感じです。■フレッシュではないから自分で自分の能力の査定はできない──『プロスピA』のご自身のデータについて、自分の能力を具現化するよりもゲームバランスを考えたとのことですが、「実際はこうなんだよ」「本当はこうしたい」といった気持ちはないのでしょうか。ダルビッシュ: ゲームなので、そこは割り切っています。「この選手はこの成績でこの数値なのに、なんで僕の数値はこれなんだ」って言うことはできるけど、ゲームでそれを言い出しても仕方ない。──ではダルビッシュさんに限らず、ゲームの数値は選手の能力を表すものではなく、別物だと考えるべきということだと。ダルビッシュ: そこはすごく難しいところで……。たとえば『プロスピA』に出てくる松坂大輔【※】さんの球種はストレート、高速スライダー、ドロップカーブと縦カット、フォーク。間違ってはいないんです。 ただ、リアタイで強い球種がなければ、現実でどれだけすばらしい投手だとしても、ゲームでは弱い投手になってしまう。──阪神タイガースOBの藤川球児さんが、自分のストレートはこんなに簡単に打たれなかったとゲーム開発者に抗議して、「火の玉ストレート」【※】という特別な球種を実装してもらった件にも通ずる話ですね。ダルビッシュ: あれはおもしろい試みですね。ああいった感じで、本当に強かった、すばらしい成績を残した選手は、ゲームでも強くあってほしいと思うんです。『プロスピA』はリアリティが高く、選手の見た目や動きも再現されている。松坂さんであれば、その投げる姿がリアルで本人そのままなのに簡単に打てる、っていうのはどういうことだとすごく疑問に思っていて。 僕がダルビッシュセレクションで岩隈久志さんや斉藤和巳さんを選出したときも、リアタイ向きの能力になるようにある程度カスタマイズ【※】したという経緯があります。 自分なら、選手として辛いときも一生懸命、プレッシャーも乗り越えてマウンドに立って成績を残していることに対してのリスペクトはほしい、と正直に思うので。──残した成績から機械的に数値を算出するのではなく、レジェンド選手に対しては一定の補正がほしいと。ダルビッシュ: そこはまた難しくて。いまの状態だからこそ、そこまで成績を残していない選手でも『プロスピA』において強い球種を持ってさえいれば、ゲーム内では強くなる。現実ではそこまで輝いていなくても、ゲームでは輝ける。そういう選手たちにとってすごくうれしいことがあるので、難しいところですよね。──『パワプロ』のデータについてはいかがでしょうか。どんな選手でも特殊能力が最大3つである『プロスピA』と比べて、個性を表現しやすい仕様になっています。たとえば『パワプロ2020』のダルビッシュさんのデータは、「キレ◯」や「奪三振」などがついている一方で、「一発病」、「負け運」、「クイックG」などのマイナス能力がついています。そのことに対して「クイックも遅くはないはずです」とツイートされていました。個別に見ていくとやはり気になる点もあるわけですよね。ダルビッシュ: まあ、選手からすれば、赤の特殊能力【※】をつけられたらやっぱりムカつきますよ(笑)。それはどの選手もが感じていることだろうけど、そこを受け入れて、もっといい能力になるようにがんばってやろうと思った人もいるでしょうし。イラッとしても、どこかで受け入れている部分もあるんじゃないでしょうか。──プロ野球選手のみなさんは、『パワプロ』で自分のデータを気にしているのでしょうか?ダルビッシュ: ほかの人たちがどのくらいやってるのかはわからないですけど、たとえば僕が『パワプロ』をやって、変な特殊能力をつけられている先輩がいたら、「こんなんつけられてますよ~」って見せますけどね(笑)。イジる材料にはなるけど、真剣に怒ってる人は見たことがないです。──ちなみに野村克也さんの取材をした際には、自身のデータについてひとつだけ「こんなに足が遅くない」と語っていました。ダルビッシュ: 少し前にあったOBセレクションで出たデータでも、たしかに走力は低かったですね(笑)。キャッチャーだから遅くされてしまうのかな。──ダルビッシュさんは『パワプロ』のデータについて、過去のインタビューで「牽制は意味がないからしない」と語っていましたよね。もしかしたら「クイックG」だった理由はその辺りにあるのかもしれません。ダルビッシュ: クイックに関して、アメリカでたくさん盗塁されていたので、そこは間違っていないと思います。 一発病は、打者有利な球場が本拠地のテキサス・レンジャーズに長くいたこと、いまのシカゴ・カブスの球場も同じであること、球場特性を少しは考えてほしいなと思うところはあります。 まあでも、僕になにかデメリットがあるわけじゃないので、大丈夫です。──ゲームバランスを考慮しない場合、自分の能力はこれだというデータを考えていただきたいのですが……。変化球も10種類以上投げてきたということで、現在の能力を作るとしたら、どんな数値になるのでしょうか。ダルビッシュ: これはすごく難しいんですが、自分で自分の能力を査定することは、たぶんできないです。──それはなぜですか?ダルビッシュ: たとえば前から投げているツーシームが、ここ2年くらいはかなり曲がるようになった。映像を見た人たちもみんなスゴいと褒めてくれるんです。 ただ、僕はその球を投げている側なので、どういうポイントから変化が始まって、バッターがどんなリアクションだったのかを、いちばん近い場所で最初に見てしまっている。つまり、撮影した映像は僕にとってフレッシュではないので、自分の投げた球のスゴさって、一切わからない。だから査定のしようがない。 たとえば山本由伸選手、菅野智之選手はどうですかと聞かれたら、これこれこうだといえる。それは彼らが投げる景色を見ないで、初めて映像で見て、その感動やスゴさを感じられるから。僕が選手を査定するとしたら、投球から感じたスゴさや感動から数字を作っていくと思います。──投げた際の感覚が残っているから、客観的な数値を作りづらい……ご本人にしかわからない感覚だと思います。ダルビッシュ: 映像でそのスゴさをフレッシュに感じるから、菅野選手のスライダーが変化量5の球威Aと査定できるわけですよね。自分の投げる球ってそれができないんですよ。 その結果、『プロスピA』でやったように、ゲームバランスを考えた能力査定になってしまうということです。 2021年版のダルビッシュも、データではスライダーがないですけど、実際はスライダーもほかの球種も、もっといろいろと投げていたけど、バランス的に強くなりすぎるし、自分ではスゴさもわからんし、まあいいか……という感じでああなりました。 実際、査定って本気でやると難しいんですよ。適当にやればすぐにでも査定しますけど、僕はピッチングや変化球に対して真剣なので、だからこそ、適当なことがいえないし、嘘がつけないんです。──査定できない理由がとても真摯で、かつ興味深いです。そして、その査定ができる、できないという感覚も、人によって違うわけですよね。ダルビッシュ: そうだと思います。自分で自分のデータを査定できる人が真剣に考えていないかといえば、そうではない。人それぞれ、感性が違うので、そういうことだと思います。■6歳の子が『プロスピA』をプレイしたら日本の野球を覚えてくれると思うダルビッシュ: (お子さんが取材部屋の近くに)あ、少し待ってください。いまお仕事してるから、ダメだよ? ……すみません、大丈夫です。──オンライン会議あるあるですね(笑)。お子さんとゲームを一緒に遊ぶこともあるんですか?ダルビッシュ: 14歳の子と『フォートナイト』をやっていたことはあります。6歳の子は、僕が1日中『プロスピA』をやっているのを見て、やり方もわかってきてると思いますね。まだスマホは持たせていないんですけどね。──6歳のお子さんが『プロスピA』デビューする予定も?ダルビッシュ: じつは最近少し考えていて。対象年齢が4歳と書いてることに気付いて、「あ、もうできるんや」と。日本の野球を覚えてくれると思うので、その点はいいことだと思いますね。──もしお子さんが『プロスピA』を始めたら、いろいろと教えてあげることも?ダルビッシュ: 聞かれたらもちろん教えますけど、そんなに真剣にやるわけじゃないと思うので。ただ、6歳の子がいい選手を獲得したら、間違って消してしまわないように、何も言わずにロックをかけるでしょうね(笑)。──親子でリアルタイム対戦をするのも楽しそうです。お子さん相手でも手は抜けないのでしょうか。ダルビッシュ: 知り合いどうしで接続するルーム戦なら、勝敗や打率は気にしなくてもいいんですけど。もし全国のユーザーとランダムマッチのランク戦で当たったら、子ども相手でも真剣にコールド勝ちを狙いますね(笑)。──そこはあくまでガチなんですね(笑)。ちなみに課金についてはどのような教育をする予定ですか?ダルビッシュ: 借金をせずに自分のお小遣いのなかだったら、いくら使ってもいいんじゃないかと思います。──最後にお子さんの話がうかがえてうれしかったです。やっぱりゲームは楽しんで遊ぶものですもんね。本日はありがとうございました!ダルビッシュ: こちらこそありがとうございました。いつも野球の話ばかりしているので、ゲームの話ができて楽しかったです。できたら月イチでやりたいくらいです(笑)。 以上が、おそらく史上初となる、ダルビッシュ有がゲームのみについて語ったインタビュー記事のすべてである。 これまでダルビッシュ選手のロングインタビューを掲載したことのある媒体は非常に少なく、一部のスポーツメディアに限られるため、今回のインタビューは非常に貴重な機会であった。ゲーマーとしての顔を紹介するにとどまらず、ゲームをプレイするうえでも、「上達する過程が楽しい」、「勝ち負けがすべてではない」など、トレーニング方法や試合に臨む姿勢にも通底する、ダルビッシュ選手独特の思考が浮き彫りになる取材となった。 野球であっても、ゲームであっても、上達への近道は存在せず、果てしない数の挑戦と失敗、その修正が必要なのである。時間内に聞くことは叶わなかったが、もしかすると、野球の練習や肉体トレーニングにおいても、“ピースを埋めていく”ようなゲーム感覚を持っているのかもしれない。 じつはこの取材、約3年前に掲載した『パワプロ』のデータを見て野村克也さんにボヤいてもらった記事の続編として企画していたのだが、さまざまな理由から実現は叶わず、ただ月日が過ぎていった。 結果的には、この企画が実現したのがこのタイミングで非常によかったと感じてる。ダルビッシュ選手が『プロスピA』に激ハマりしたことで、彼のゲームに対する情熱が高い状態でインタビューすることができたからだ。 どの質問に対しても、間を置かずに明確な答えが返ってきたため、短時間ながら濃密なインタビューが可能となった。これは普段からあらゆる物事に対して思考を重ね、自分なりの答えを持ち続けているからだろう。 35歳になったダルビッシュ選手は、現在も球速やキレは衰えず、平均球速や回転数は、年齢を重ねてむしろ進化を遂げている。これも日々の思考と鍛錬の賜物だ。 この記事がきっかけで、ゲーム好きの仲間として、ダルビッシュ有の来季の活躍を応援する人がひとりでも増えることを願っている。©NPB ©Konami Digital Entertainment

電ファミニコゲーマー:豊田恵吾、森ユースケ

最終更新:電ファミニコゲーマー

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