『エルデンリング』レビュー。刺激に満ちた冒険が描き出すのは、あなたの英雄譚だ。本作はフロム・ソフトウェアの集大成とも言える傑作に!
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文・取材・撮影:西川くん フロム・ソフトウェアより2022年2月25日発売予定の『ELDEN RING』(エルデンリング)。対応ハードはプレイステーション5、プレイステーション4、Xbox Series X|S、Xbox One、PC(Steam)となっている。【記事の画像(29枚)】を見る 本作は『DARK SOULS』(ダークソウル)シリーズなどで知られるフロム・ソフトウェアの完全新作タイトルだ。プレイヤーは広大なオープンフィールドを探索し、さまざまな冒険をくり広げていく。本記事では、製品版相当となるバージョンをプレイしたレビューをお届けしよう。今回はPS5版でプレイしている。 なお、“これから冒険を始めるので、攻略につながるような情報は見たくない!”と、ネタバレが気になる人もいるだろう。冒険の楽しさを損なわないようになるべく配慮しつつ、要素と魅力の紹介に留めているので気になる人は安心して読み進めてほしい。ただし、本記事には撮りおろしの動画がある。こちらにはそういった要素が少し含まれているので、ご注意を!※フロムゲー初心者の『エルデンリング』レビューはこちら『エルデンリング』初心者レビュー。“フロムゲー“初心者が挑んだ感想は…… 難しいけれど、遊び続けることで自身が成長していく感覚に魅了された!!https://www.famitsu.com/news/202202/24252382.html祝福に導かれし“褪せ人” 冒険の舞台となるのは“狭間の地”。ここはかつて“黄金樹”の祝福に満ち溢れた土地だった。祝福を受けた者は、その瞳に黄金の光を宿している。しかし、祝福を失った者たちは目から光が消えていた。その目を通して映る狭間の地は、色褪せた世界だ。いつしか祝福を失った者は“褪せ人”と呼ばれ、狭間の地から追放されてしまう。 プレイヤーであり、本作の主人公となるのは、狭間の地を追放された褪せ人の子孫だ。あるとき、黄金樹の祝福の根源たる“エルデンリング”が砕けてしまう。“エルデンリング”の破片である大ルーンを手にしたデミゴッドたちはその力に狂い、“破砕戦争”を引き起こす。誰もが王を目指して戦ったが、ついには誰も勝たなかった。そして、世界は壊れてしまった。 やがて、狭間の地の外にいた褪せ人のもとに、かつて失くした祝福への導きがもたらされる。謎の啓示は褪せ人を狭間の地へと再び誘う。その啓示は主人公をエルデンリングへと導き、「王となれ」と囁く。 まとめると、崩壊した“狭間の地”で、主人公の“褪せ人”は祝福の導きを頼りに、“エルデンリング”を求めて冒険をくり広げる。これが本作の大まかなあらすじだ。誰が何のために“エルデンリング”を砕いたのか? そして、主人公は“王”となれるのか? といった物語が展開される。物語がちょっと複雑だった『ダークソウル』シリーズと比べると、比較的わかりやすい。そんな壮大かつ王道のストーリーも、本作の魅力のひとつだ。王道のファンタジー世界 グラフィックはなかなかに美しく、とくに遠景が顕著に思う。アップにして細かく見ると、昨今のAAAタイトルの中でもトップクラスと言えるような高繊細で美しいグラフィックとまではいかないが、気になるものではない。画面全体を見たときの、トータルのバランスが美しくすばらしいのだ。 ゲーム序盤に訪れる“リムグレイブ”は、草原地帯、森林や海岸、さらにはダンジョンに沼地など、ここだけでも数多くのシチュエーションが用意されている。冒険を進めれば、毒沼やら奇怪な場所など、さまざまなエリアが登場し、冒険心をくすぐってくれる。 『ダークソウル』シリーズなど、本作に至るまでの系譜に連なる作品は、全体的にダークな雰囲気をまとっていた。『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』は和のテイストや自然の美しさを表現しつつも、やはりどこかに暗さや退廃的なイメージを持っていたと思う。しかし、本作は全体的に王道のハイファンタジーという雰囲気を纏っており、これまでの作品とはひと味違う、どこか爽やかな空気を感じた。 とはいえ、本作でもディレクターを務める宮崎英高氏のテイストというか、奇妙かつ闇を感じさせるような要素は健在だ。それはフィールドのスポットひとつを取ってもそうだし、物語の中にも存在する。決して単純明快で爽快な冒険活劇では終わらないのが、宮崎氏のいちファンとして「そうそう、これこれ!」と、個人的には喜ばしい要素と言えるのだ(本作から初めて宮崎氏の作品に触れた人は、最初はとまどうかもしれないが……)。 目的などは先述の通り分かりやすいが、やはりそこは宮崎氏の作品らしく、突然の情報に「えっ? なんのこと?」と思う部分もやはりある。本作は、フレーバーテキストやNPCとの会話などから断片的な情報を集めて、プレイヤー自身が物語を紡いでいくというスタイルを採用しているからだ。主人公と同じような気持ちで謎を解き明かしていくのが醍醐味でもあるので、会話シーンやテキストなどから、いろいろと考察しながら物語を紐解いていこう。素性の選択に悩むキャラクタークリエイト 主人公である“褪せ人”は、キャラクタークリエイトで製作することになるのだが、名前、容姿、年頃などを自由にカスタマイズできる。見た目はこれまでのフロム・ソフトウェア作品らしいというか、ただ見栄えがいいだけでは纏まらないような、少し味のあるキャラクターも作成可能だ。見た目はゲーム中に変更できるようになるので、ゲーム開始時にさほど悩まなくてもいいのもうれしいところ。 もっとも悩ましいのが、いわゆる初期クラスとなる“素性”の要素。盾と剣を持つシンプルな“放浪騎士”や魔術を得意とする“星見”など、個性的な10個の素性の中からひとつを選ぶことになるのだ。筆者は個人的に“侍”に惹かれ、選択した。ハイファンタジーの作品の中に、ポツンと“和”の要素があるのは、往年のファンタジー系RPGを彷彿とさせるからだ。なにより、設定として侍は“葦の国”の者だというではないか。どうしても『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』の舞台である“葦名の国”を思わせる設定に、フロム・ソフトウェアのファンとして、ついうれしくなったこともある。広大で探索が尽きない狭間の地 ゲームシステムは『ダークソウル』シリーズなどの要素を大きく踏襲しており、シリーズのファンならなじみやすいだろう。“祝福”と呼ばれる拠点(『ダークソウル』シリーズで言うところの“篝火”のようなもの)を探してファストトラベルができる場所を増やしていきながら、フィールドで戦闘と探索を積み重ねて冒険をくり広げていく。冒険に関する基本的な部分は、とてもシンプルなアクションRPGと言える。 その舞台となる狭間の地は、とても広い。とにかく広い。本作の発売前にリムグレイブの一部のみが体験できたネットワークテストが実施されたが、そこで体験できたリムグレイブの西部だけでもとにかく広かったのは、テストに参加できた人なら覚えているだろう。だが、実際に冒険を体験する狭間の地は、もっと広大だ。これは筆者の体感だが、リムグレイブ西部はゲーム全体のフィールドの1/10にも満たないほどの、いちエリアだった。それくらい、本作の探索範囲は広いのだ。 フィールドの広さもさることながら、本作には地下などに広がるダンジョンや、いくつか点在している巨大な“レガシーダンジョン”と呼ばれるものも存在する。密度の濃いエリアでは、密度の濃い体験がもたらされる。だからと言って広大な場所が散漫かと言えばそうではなく、まさに旅をしている開放感と冒険感が味わえる。そのバランスとプレイ感に、RPGとしてのおもしろさを強く感じた。 広大ゆえに移動がたいへんと心配するかもしれないが、ゲーム序盤で霊馬“トレント”を入手できる。霊“馬”なので騎乗すれば高速移動が可能だ。また、基本的にはいつでも祝福へファストトラベルできるため、移動が苦になることはなかった。便利な移動手段が最序盤から手に入るのも、ストレスがなくうれしい要素だった。 なお、プレイボリュームは言わずもがなで、めちゃくちゃ豊富。遊び切ろうと思ったら、プレイ時間は余裕で100時間を超えるだろう。ガッツリと腰を据えて、濃いアクションRPGを遊びたい! そう思う人には、本作はまさうってつけだ。多彩な戦術が楽しめる戦闘 戦闘のシステムは、右手や左手の武器装備、武器の持ちかた変更など、『ダークソウル』シリーズを踏襲している。武器の持ち替えによって多彩なアクションをくり出したり、自由度の高い武器の運用が楽しめる魅力は、そのまま味わえると言っていい。 これまでの系譜に連なる『Bloodborne』(ブラッドボーン)なども含めて、基本的には“パリィ”が重要な戦闘の要素となっていた。もちろん本作でも極めれば強力なアクションとなるが、本作ではあくまで攻略手段のひとつにすぎないように感じた。 なぜならば、ほかにも戦闘における攻略手段がふんだんに用意されているからだ。遠距離武器で遠くからチクチク攻撃してもいいし、魔術や祈祷を使った攻撃も強力で扱いやすい。“ガードカウンター”というガードから強力な反撃につながるアクションがあったり、敵の体勢を崩す要素もあり、攻撃が防御につながることもある。とにかく多彩な戦術が取れるのだ。 また、“霊体召喚”という味方になるキャラクターを呼び出せる要素もある。オンラインでの協力マルチプレイもカジュアルになってプレイしやすい。いわゆる“死にゲー”と呼ばれる『ダークソウル』シリーズなどと比べると、グッと攻略しやすいゲームになっていると思う。と言いつつ、死ぬっちゃ死にますがね。 『ダークソウル』シリーズでは、何かに特化したビルド(キャラクターの成長指針)を取ることがポピュラーだった。本作でも、もちろんその方針を取るのもアリだ。個人的には、本作はある程度は何でもこなせるようなキャラクターにしたほうが攻略しやすく、何より武器や魔術・祈祷などのアクションもそこまで苦労せずともひと通りは楽しめた。といっても、そこは人それぞれなところであり、「俺は魔術剣士でいくぜ!」と、RPGとしてのロールプレイをより深く突き詰めたい人もいるはずだ。そして、その願いを可能にするビルドの深さもある。この点も、冒険の自由度の高さ、そしてRPGとしての魅力につながっているのだと感じた。戦闘の難度はやはり高め 戦闘の難度だが、メリハリが効いているという言葉がふさわしい。そこらにいる通常の敵(いわゆる雑魚)は、『ダークソウル』シリーズなどと比べるとかなり倒しやすく、敵キャラクター全員と、ジリジリと手に汗握るようなバトルをすることが求められるわけではない。もちろん、じっくりと戦う必要のある通常の敵もいるが。 一方で、ボスとの戦いの難度は、やはり高い。軽々と初見で倒せるようなボス戦には決してなっていないし、何度も命を落としながら攻略を重ねていくスタイルとなっている。とはいえ、霊体召喚や協力マルチプレイもあるので、ゲーム側から「ガチンコで挑んでくださいね」と提示される場面は、じつはそこまで多くはない。もちろん霊体召喚などを使わなければガチンコ勝負ができるので、プレイヤーのさじ加減で難度が変わると言っていいかもしれない。あらゆる方法を駆使して王を目指すのか、死に物ぐるいで孤独な王を目指すのかは、プレイヤー次第だ。 また、レガシーダンジョンと呼ばれる巨大なダンジョンは、『ダークソウル』シリーズに似た体験が楽しめる。ダンジョンの中を探索しながら敵と戦い、上限のある回復薬の管理や、チェックポイントである祝福を「まだかまだか!」と探し求める、あの感じ。死んでしまった際の「あぁ、またあそこからやり直しか……」と嘆き、何がいけなかったのかを考えるのは、やっぱり楽しいものだ。本作にはジャンプアクションがあるため、ギリギリの距離に見える足場をジャンプして渡ったり、じつは登った通路の先に新たな道が見つかるなど、より立体的な構造のダンジョンに仕上がっているのも魅力だ。 と、全体的には比較的難度が抑えられている(※フロム・ソフトウェアファン比)ように感じながら、一部の強敵はやはり難関となる、といった具合だ。ゴリゴリに骨太で難しいというわけではない。とはいえ、アクションが苦手な人には、やはり壁が立ちはだかると思う。経験値を稼いでステータスを上げていけばラクに進める……というわけでもない(もちろんラクにはなるけれど)。そこはアクションの腕前や戦術の深さを試される部分でもあるので、ぜひあきらめずに挑戦し、強敵を倒した達成感を味わってほしいところ。これが『エルデンリング』の戦いだ! 戦闘の模様を動画で確認しよう 本作の戦闘について、ざっくばらんに撮影した動画をお届けする。通常の敵はサクサクと、ボス戦では手に汗握るような戦いが楽しめる様子を確かめてほしい。※一部のシーンには敵の戦闘方法などの情報が含まれているので、気になる人はご注意を!大きくフィーチャーされたRPG要素 『ダークソウル』シリーズはアクションとRPGの両立を図り、『Bloodborne(ブラッドボーン)』はそこからアクション性とステージの攻略要素をさらに高めた作品だったと思う。そして『エルデンリング』は、RPG要素をよりフィーチャーして、まさに自分だけの冒険を体験できる作品に仕上がっていると感じた。 たとえば、エリアの攻略手順。これが非常に自由。最初に訪れるリムグレイブのボスをスルーしてつぎのエリアに向かうこともできるし、各地を探索しながら主人公を鍛えて挑むのもいい。メインストーリー上で達成すべき目的も存在するが、基本的にはどのような冒険を楽しむのかは、プレイヤーの自由だ。もちろん、一部のスポットには特定のエリアの攻略やボスを撃破しないと入れない場合もある。 武器や攻撃手段など、多彩な選択肢をいろいろと駆使しながら戦う必要があるのも、RPGらしいポイントだろう。たとえば、剣を使った斬撃が利きにくい岩のような敵にはハンマー系の打撃武器で攻撃したり、燃えやすい敵にはふつうの武器よりも松明を使ったほうが有利になることもあるなど、臨機応変な装備の選択が攻略につながっているのが、なんともRPGらしい。 武器や防具の種類も豊富。もう豊富すぎて、ビックリするくらいに多い。剣や槍などの武器種だけでも多いのに、その武器によってアクションが変わったりもするので、装備の収集が楽しくて仕方がない。『ダークソウル』シリーズでも同じような要素はあったが、本作はさらにボリュームアップしているのだ。 その楽しさに拍車をかけているのが“戦技”の存在。戦技とはスキルのようなもので、発動することで攻撃アクションをくり出したり、強化効果などを得られる。『ダークソウルIII』にも戦技(スキル)はあったが、これは武器それぞれに紐づいたものだった。本作でも戦技は武器に紐づいているが、さらにカスタマイズを深めることができるのだ。 それが“戦灰”だ。このアイテムを手に入れると、その戦灰に付いている戦技を、対応した武器に付与できる。これで自由な戦技の選択が可能となり、「性能はいいけど、戦技は微妙で使いにくいな」みたいなシチュエーションがなくなった。また、自分の好きな武器をひたすら使い込むのもいいし、武器を使いわけて器用に戦うのもアリという、戦闘における選択肢の幅が大きく広がっているのはうれしい。このあたりのカスタマイズ性の高さも、自由度の高さにつながっている。個性的な登場人物も見どころ 登場キャラクターはあいかわらず個性的だが、宮崎氏のこれまでの作品と比べるとかなり“丸い”というか、わかりやすくなった。もちろん、その中には強烈すぎる個性を発揮する者もいるが、愛着が持ちやすいというかなんというか……。形容しがたい者たちと比べると、比較的やさしい人たちと出会うことになると言えばいいだろうか。 登場人物の数もかなり多く、いろいろな人たちとの交流が楽しめるのも魅力のひとつだ。断片的に語られる世界の謎や、褪せ人たちの物語が、世界観をより深く描いてくれる。サブクエスト的な要素もあり、彼らとの出会いもフィールドの探索をワクワクとさせてくれる要素だった。個人的な評価は「万人にオススメしめたい“傑作”」 1点だけ言っておきたいのは、ロード時間について。今回はプレイステーション5版でプレイしたが、ロード時間はほとんどない。リトライもサクサクなので、気軽に死ねる(語弊がある)し、ファストトラベルもバンバンできるので、プレイは快適だ。ただ、プレイステーション4版で慣れれば気にならないだろうが、プレイステーション5版を体験するとストレスに感じてしまう要素かもしれない。 以上、本作のおおまかな感想をお伝えしてきた。フロム・ソフトウェアの作品といえば、妖艶に光る魅力的な刺々しさや尖った部分が多く、ここが刺さるゲームファンにはたまらないものだが、けっして万人にオススメできるモノではなかったと、個人的には思う。高難度であることがハードルではあり、アクションが苦手な人に『Bloodborne』や『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』をオススメしても、投げ出してしまうかもしれないし……。 だが、『エルデンリング』は、万人にオススメできるアクションRPGだ。やや複雑な要素を含んではいるが、比較的遊びやすく、全体的にストレスフリー。誰でも壮大な冒険を楽しめる仕上がりになっている。もちろん難度が高い部分もあるが、救済処置も多い。詰まったら、ほかのプレイヤーに助けを求めることもたやすい。 『エルデンリング』は、これまでフロム・ソフトウェアが培ってきたすべての要素が詰まった、まさに“傑作”である。唯一のハードルと言えば、その多すぎるプレイボリュームかもしれない。さらに、プレイを進めるほど冒険する場所がどんどん見つかるので、やめどきも見つからない。遊べばハマることは間違いナシだ。 以上の点から、気軽に手を出すのは危険なゲームと言える。完全に抜け出せない沼に入る、そんな心構えで挑んでほしい。褪せ人よ、王となれ。週刊ファミ通2月24日発売号は『エルデンリング』60P特集! また、週刊ファミ通2022年3月10日号(2022年2月24日発売)は表紙とイラストカード、ゲーム情報や宮崎英高氏インタビューなども含めた60ページ大特集をお届けしているので、あわせてチェックしてほしい。
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