あの怪獣王よりもデカい!話題沸騰の『大怪獣のあとしまつ』、怪獣「希望」を徹底解説
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45コメント45件『大怪獣のあとしまつ』より、死体になった巨大怪獣「希望」を徹底解説
倒された巨大怪獣の死体は誰がいつ、どんな方法で処理をするのか。これまでのヒーロー映画ではあまり描かれてこなかった領域を、ドラマ「時効警察」シリーズや『音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』(18)などの奇才・三木聡が山田涼介を主演に迎えて、異色の空想特撮エンタテインメント『大怪獣のあとしまつ』(公開中)として映像化した。本稿では最初から死体として登場する大怪獣「希望 -kibou-」の全貌を、登場人物たちの迷走ぶりとメイキングなども絡めて徹底解説していこう。【写真を見る】怪獣造形のスペシャリスト、若狭新一が「ここまで大きいものは作ったことがない」と語る「希望」の6メートルの模型※本記事は、『大怪獣のあとしまつ』のストーリー展開に触れる記述を含みます。未見の方はご注意ください。街を破壊する巨大怪獣が突然死亡した。これで平穏な日々が戻って来たかと思いきや、河川の上に横たわる巨大な死体は腐敗による体温上昇で体が膨張し、ガス爆発の二次災害を起こしかねない。だが、終焉のカウントダウンが始まったというのに、政府関係者は不毛な会議を繰り返し、責任を押し付け合ったりして右往左往するばかり。はたして、そんなことで巨大な死体を処理できるのだろうか。■通天閣の約1.5倍、牛久大仏やシン・ゴジラの約1.3倍の高さがある怪獣「希望」なにからなにまで謎だらけのこの怪獣。実は死亡した原因もわかっておらず、突如現れた光エネルギーに包まれたあとには絶命していたという。しかし、その光と怪獣の死の因果関係は不明のまま。死体になっても人類にとって脅威であることに変わりはなく、その一番の要因となるのがサイズの巨大さ。倒れた状態でも全高(地面からもっとも高く突き上げられた右足の先まで)は155メートルもあり、わかりやすく(?)説明するなら通天閣の約1.5倍、牛久大仏やシン・ゴジラの約1.3倍にあたるという。また、最全長(顔の先端から尻尾の先まで)は380メートルで、これは東京ドームの直径の約1.5倍。忠犬ハチ公像から渋谷パルコまでの距離にも相当し、徒歩だと先から先まで移動するのに約5分もかかってしまう。さらに、背中にはきのこ状の突起物があり、これが腐敗による体温上昇で膨張を続け、ガス爆発の危機が迫っている。とにかく厄介で危険な死体であることに間違いないのだが、人類の生物学史上に残る貴重な環境資源であるため、今後の「希望」に繋がるという意味を込めて、作中の日本政府は「希望」と名付けることにする。■「希望」の処理をめぐり、不毛な言い争いをするだけの登場人物たち巨大怪獣が謎の光に包まれて、突然死んでしまう――普通のヒーロー映画なら、これでめでたし、めでたしとなるところだが、その状況が現実の社会で起きたら、そこで終わらないことは誰だってわかるはずだ。巨大怪獣をどうやって処理するのかという難題を前にして、内閣総理大臣(西田敏行)を筆頭に、官房長官(六角精児)、文部科学大臣(矢柴俊博)、厚生労働大臣(MEGUMI)、国土交通大臣(笠兼三)、環境大臣(ふせえり)、財務大臣(笹野高史)、外務大臣(嶋田久作)、国防大臣(岩松了)ら日本の中枢が集結。建設的な議論を繰り広げ、高いリーダーシップで国民を導いていく!…こともなく、何度も何度も不毛な言い争いを繰り返しては、責任を押しつけ合い、それぞれが自分の手柄を立てようと奔走するだけ。その間にも死体から発生したガスが銀杏のような猛烈な悪臭を放ち、死体から北西20キロメートル圏内が腐敗臭に覆われてしまう。しかも、このガスを人間が浴びると体にとんでもない変化が起きることものちに発覚。それでも政府関係者は依然として、ガスが排泄物の臭いなのか、吐瀉物の臭いなのかとどうでもいいことを口論し(最終的に銀杏の臭いに決定)、国家予算の奪い合い、足の引っ張り合いに明け暮れるばかり。こんな時に頼れるのはやはり現場の人間。ということで、いかにも頼りがいのある国防軍の大佐(菊地凛子)も登場するのだが、満を持して決行した死体凍結作戦もあっけなく失敗に終わってしまう。そして、国民の運命を懸けた死体処理の最終極秘ミッションは、環境大臣秘書官の雨音ユキノ(土屋太鳳)の元恋人で、数年前に突然姿を消した過去を持つ首相直轄組織・特務隊の隊員、帯刀アラタ(山田)の手に委ねられることになる。■「ゴジラ」も手掛けた怪獣造形のスペシャリストが参加!壮大な死体処理ミッションにリアリティを持たせるため、バカバカしい内容とは裏腹に、本作にはほかの怪獣映画にも負けない巨費が投じられ、三木監督のこだわりが徹底されている。注目したいのは、なんと言っても大怪獣「希望」のスケールと造形だ。「希望」はあのゴジラをも凌ぐ日本映画史上最大級の全長を誇る超巨大怪獣という設定で、観客を一気にこの未曾有の世界観に引き込む役目も担っている。死体ではあるが、本作のドラマを引っ張る重要なキャストということで、そのビジュアルには細心の注意が払われた。「ほかの怪獣に似ていてはいけない。背中にきのこ状の突起物がある」などといった三木監督からのオーダーを受け「希望」を作り上げたのは、平成ゴジラシリーズなどを手掛けた日本屈指の怪獣造形のスペシャリスト、若狭新一だ。「実際(=撮影用に制作した)の『希望』は6メートルなんですけど、ここまで大きいものは作ったことがない。これまでは人が中に入る着ぐるみの怪獣がメインでしたから、高くてもせいぜい2メートル50センチぐらいでした」と若狭は撮影時を振り返る。「それに、いまはコンピューター上で怪獣をデザインするし、デジタルでほとんど作ることを前提にやっている時代です。なので、デジタルでもちろん後処理はしますが、僕たちが手を動かして作った造形が活かされた作品になっていることに非常に感動しました」。死んだ「希望」の足が天高くそびえ立っているような状態を提案したのは三木監督だ。「茨城県の高さ100メートルぐらいの牛久大仏を高速道路から眺めた時のことを思い出して。死んだ怪獣の足があれぐらいの高さまで上がっていた方がバカバカしくておもしろいなと。大きい方が、あれをどうするんだよ!?ってことになりますからね(笑)」。また、横たわっているだけという特徴的な「希望」の状態について、若狭は以下のようにコメントしている。「今回は死体になった怪獣が川で横たわっているシーンしかないので、僕たちも最初から立っている姿は作りませんでした。死体の状態でいちばん映えるようにするにはどうすべきかを考えながら、横たわっている姿を模型にし、監督の要望をフィードバックさせながら作っていきました」。そんな造形物とは別に、ワイヤーに吊られたアラタ役の山田が、傾斜45度の怪獣の表皮を登るシーンなどに挑んだことも本作のリアリティと緊張感を高めている。ガスマスクとゴーグル、ヘルメットを装着した山田は、自分の背丈を超えるかなり重い「穿孔爆弾」の装備も背負い、危険なジャンプシーンにも果敢にチャレンジ。一切妥協しない三木監督のもと、それを10回ほど繰り返した時は正直つらかったようだが、その迫真が映画のドキドキ感を増幅させているのは言うまでもない。さあ、ここまで読めば、怪獣の死体処理の前知識は十分だろう。あとは映画館のスクリーンで巻き起こる、想像の斜め上を行く大騒動に身を任せてほしい。文/イソガイマサト
最終更新:MOVIE WALKER PRESS