ソフトバンクが法人事業戦略を説明 都市OSからLINE活用、5Gコンソーシアムまで(1/2 ページ) - ITmedia Mobile
ソフトバンクが6月1日、法人事業に関する説明会を実施。同社が現在力を入れている法人事業に関する今後の方針と、最新の取り組みについて説明した。
代表取締役社長執行役員兼CEOの宮川潤一氏は、「わが社はBeyond Carrier、Beyond Japanでキャリアを超えると説明してきたが、それを担っているのが法人事業」と話す。
法人事業の説明会に登壇するソフトバンクの宮川氏宮川氏によると、従来のソフトバンクの法人事業は、固定電話やスマートフォンなど通信関連の事業が中心だったが、この市場は3兆円規模の中で、NTTやKDDIとシェアを奪い合うレッドオーシャンになっていたとのこと。そこで2030年には100兆円規模になるというブルーオーシャンを目指し、企業のデジタル化を推進するソリューション事業へとシフトするというのが法人事業の戦略の軸になっている。
デジタル化の流れが加速する中、同社にとって強みとなっているのが顧客接点の豊富さだと宮川氏は説明する。ソフトバンクの携帯電話事業に加え「Yahoo! Japan」と「PayPay」、そして新たに「LINE」がグループに加わったことで、B2B2Cのソリューション提案ができる体制が整えられた。
そして同社が法人事業を展開する上で重視なポイントとなっているのは、官民のデータを連携する基盤を構築することだという。独立している個々のデータを1つの基盤で一元化することで、あらゆる分野のデジタル化ソリューションを提案できる「都市OS」の実現に向けた取り組みをソフトバンクでは進めているという。
今まで個々が管理していた官民のデータを一元的に連携させる基盤を用意。社会課題解決につながるさまざまなサービスを実現し、豊富な顧客接点を活用してその利用を促進する「都市OS」の実現に向けた構想も示したそうしたデータを活用し、社会課題を解決する策として、宮川氏は「デジタルツイン」を上げる。デジタルツインは現実世界のデータを仮想空間に取り込み、AI技術などを活用してシミュレーションした結果を現実社会に反映させることで効率化を図る技術だが、こうした技術の実現には、社会全体で提供される情報を相互に連携し合うことが重要になってくるとしている。
宮川氏はBeyond Japan戦略の下、日本で培ったソリューションを海外で展開していきたい考えも示す。一連の取り組みによって、法人事業を現在のコンシューマー事業に続く第2の柱へと成長させ、「日本をDX(デジタルトランスフォーメーション)先進国にする」と強い意欲を示している。
法人事業は国内だけでなく海外にも拡大し、携帯電話を主体としたコンシューマー事業に並ぶ柱に育てていく方針だという代表取締役副社長執行役員兼COOの今井康之氏は、法人事業におけるソフトバンクの強みを説明した。同社の法人事業は2004年に買収した日本テレコムがベースとなっているが、買収当時は赤字だった事業を、約14年で1000億円の利益を出す事業へと成長させている。
現在までの法人事業の取り組みについて説明する今井氏ただその成長は必ずしも右肩上がりではなく、2015年に4社が合併して現在のソフトバンクが生まれた際に一度落ち込んでいる。そこから再び成長軌道に乗せることができたのは、2017年に「デジタルトランスメーション本部」を設立し、ビジネスモデルの転換を図ったことが大きいと今井氏は話す。
それまでソフトバンクの法人事業はスマートフォンなどを単体で販売していたが、デジタルトランスフォーメーション本部の設立を機にコンサルティングができる人材や、個々の業界に強い人材を増やして業界特化型のソリューション提案ができる体制を整え、通信をベースにさまざまなデジタル化のソリューションを提案するビジネスへと方向転換を図ったのだそうだ。
現在の成長軌道に乗せることができた要因は、通信単体での販売から、デジタル化ソリューションへというビジネス転換が大きく影響したというその結果、クラウドサービスは2018年からの3年で1.9倍、IoT関連は7.3倍、セキュリティは5.2倍と売上高を大きく伸ばしており、「売上を伸ばしたのはコロナ禍でテレワークが増えたからと思われがちだが、それ以前から非常に大きく伸ばしている」と今井氏は話す。そうしたことから今井氏は、現在同社が目標に掲げている、2022年に法人事業の営業利益を1500億円にするという目標についても「オンスケで達成できる」と強い自信を示している。
赤字だった日本テレコムを買収してから14年で利益は大幅に拡大。デジタル化需要の拡大で2022年の営業利益1500億円達成にも自信を持っているという今井氏は、ソリューション事業を拡大する上で重要なのはデータだと話す。「いま日本はデータ活用において先進国とは全く呼べない」と今井氏は厳しく指摘しており、ソフトバンクは現状を打開して日本をデジタル化の先進国にする役割を担っていきたいと話している。ソフトバンクはクラウドを一元的に提供する仕組みを整えることで、データを活用したマーケティングや自動化などによるデジタル化のソリューション導入を促進し、企業からの支持を得ているとのことだ。
さらに今井氏は宮川氏同様、ソフトバンクの今後の強みが豊富な顧客接点を生かした「B2B2C」にあると説明。豊富な顧客接点を生かした集客モデルの構築を進めているそうで、セブン-イレブン・ジャパンのアプリとPayPayの連携施策で、1カ月のうちに350万超の利用者がサービス連携を実施したことがその象徴になるとしている。
ソフトバンクは携帯電話事業の他、「Yahoo! Japan」「PayPay」、そして「LINE」をグループに持ち顧客接点で圧倒的な強みを持つことから、それを生かしたB2B2Cのソリューションに力を入れるとしているただ顧客接点に関しては、LINEの個人情報が一部中国で閲覧できる状態にあるなどの問題が指摘され、大きな問題として取り沙汰された経緯がある。この点について今井氏は、LINEのデータを2021年9月までに日本のサーバに移すと説明。その上で「個人情報を扱う企業とのタイアップは変わることなく進めていきたい」と話し、細心の注意を払いながらもLINEを活用した事業には力を入れていく方針を示している。
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