Q&A: Google の「 Topics 」とは? - 広告ターゲティングのためのGoogleの新たな提案 | DIGIDAY[日本版]
プライバシーがますます重視される世界において、ターゲティング広告の進むべき道を見つけ出そうとするGoogleの試みは、多くの(声高な)批判を浴びながら堂々と続けられています。Googleは、サードパーティCookieを使った広告ターゲティング機能に代わるものとして発表した提案が侵襲的すぎるとしてやり玉に挙げられたあと、「Topics(トピックス)」と呼ばれる代替手段を導入して、振り子を戻す動きを見せています。
Googleが自らに課したサードパーティCookieの廃止期限が来年に迫るなか、Cookieの代わりとなる同社の「プライバシーサンドボックス(Privacy Sandbox)」ポートフォリオにTopicsがどのような形で組み込まれるのか、もう一度確認してみる価値はあるでしょう。
いつものQ&A方式で解説していきます。
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──GoogleのTopicsとは何でしょうか?
Topicsは、サードパーティCookieに代わってオンラインで人々を識別する手段としてGoogleがテストしているツールです。同社はこのツールで、人々のプライバシーを保護しながら、ターゲティング広告を売買できる企業の能力を維持しようとしています。
サードパーティCookieは、1990年代に登場した当初からオンライン広告エコシステムでデータを結び付ける役割を果たしてきましたが、Googleは広く利用されている「Chrome(クローム)」ブラウザで、2023年にサードパーティCookieを無効にすることにしています。しかし、業界が今後進むべき方向性に関してコンセンサスを得ることは難しいのが現状です。
──でも、Googleは前にも似たようなことを試していましたよね。鳥の群れ(flock)のような名前のツール(FLoC)を使って。
はい、まあそうですが、ここで少し状況を説明しておきましょう。
GoogleがCookieに代わる手段として前に提案したFLoC(Federated Learning of Cohorts:コホートの連合学習)は、やはり鳥の世界にたとえるなら、ハトがたくさんいる鳥小屋のなかにネコを解き放つようなものでした。なぜなら、簡単にいえば、FLoCのコンセプト自体が(皮肉にも)プライバシーに関する懸念だらけで、欧州のプライバシー法であるGDPRなどの法律が課している要件をとうてい満たせなかったからです。
ユーザーの閲覧履歴に基づいて個人レベルでターゲティングを行うCookieベースのアプローチと異なり、FLoCは閲覧履歴に基づいて人々を関心別のグループに振り分けるというものでした(このグループは車の購入に関心を示している人々や、衝動買いをしがちな人々で構成されるもので、コホートと呼ばれます)。こうしたグループがいわば隠れ蓑となって、オンラインでの匿名性を高めてくれると考えられていたのです。しかし、このプライバシーの盾には、無数の小さな穴が開いていることがわかりました。
たとえば、研究者らはトライアルの段階から、FLoCのデータが個人を特定できる情報と紐付けられる可能性を懸念していました。もしそうなれば、人々のサイト訪問履歴や関心に関する情報が、悪意を持って公開されてしまう可能性があります。そのため、コホートに基づくターゲティングが、特定の人々を差別するために利用されかねないという新たな懸念が生まれたのです。
その一方で、FLoCは、機械学習を活用して、閲覧履歴に基づいてユーザーを関心別にグループ分けするというコンセプトを導入しました。また、このグループ分けの作業をユーザーのコンピューターやスマートフォン上で実行し、データがGoogleなどほかの企業のコンピューターに送信されないようにすることで、個人情報の保護を強化するという重要な提案をしたのです。
──なるほど。では、Topicsの仕組みを教えてください。FLoCとの違いは何でしょうか?
FLoCで支持を得られなかったGoogleは、原点に立ち返ってTopicsを開発しました。これはFLoCと同じく、人々がオンラインでチェックするコンテンツのカテゴリーに基づいて広告ターゲティングを行い、カテゴリーの情報をデバイス上に保存するというものです。ただし、FLoCと異なり、はるかに大まかなカテゴリーを利用することを提案しています。
──Topicsはどのように機能するのでしょうか?
Chromeなどのウェブブラウザは、Topicsのツールセットを利用する手段であるTopics APIを介して、「自動車と乗り物」「バスケットボール」「ニュース」「婦人服」など、ユーザーの関心をもっともよく表していそうな複数のトピックを閲覧履歴に基づいて選択します。また、サイトのホスト名に基づいてそのサイトのトピックを判断します。たとえば、ホスト名が「dogs.com」であれば「イヌ」のトピックに分類するといった具合です。ただし、企業が自社サイトに関連付けるトピックを申告できるようになる可能性もあります。
ブラウザは毎週、ユーザーひとりにつき5つのトピックを選択します。このうちのひとつは無作為に抽出されますが、これはTopicsを利用して個人を特定しようとする企業を排除するためです。その後、ひとつのトピックまたは関心のカテゴリーを選択し、1週間にわたってユーザーに関連付けます。なお、ユーザーは自分に関連付けられたトピックを変更できるほか、この広告ターゲティング機能自体を無効にすることもできます。
各トピックは3週間保存されるため、あるユーザーがウェブサイトを訪れると、そのウェブサイトまたはそのサイトで広告ターゲティングを行っているアドテク企業は、ユーザーに関連付けられたトピックをTopics API経由で3つまで確認できます。ただし、彼らが確認できるトピックは、そのサイトに関連付けられたものか、そのアドテク企業のコードが渡されるほかのサイトに関連付けられたものに限られます。
したがって、「イヌ」「テーマパーク」「ウエディング」という3つのトピックに関連付けられているユーザーが政治ニュースのサイトを訪れても、そのサイトは1週間が経過するまで、このユーザーのトピックを一切確認できません。しかし、翌週に「政治」というトピックに関連付けられたこのユーザーが再びそのニュースサイトを訪れると、そのサイトは少なくとも「政治」のトピックを確認できるようになります。
──トピックはいくつあるのですか?
現時点で、Topics APIには関心を表すトピックが350種類あります。これに対し、FLoCではトライアル中に3万を超える分類用のグループが用意されていました。その粒度の細かさのために、データのリバースエンジニアリングやユーザーデータの特定が可能になったというのが、FLoC APIに対する批判だったのです。とはいえ、350というトピック数も出発点に過ぎません。最終的には、数千のトピックがリストに追加される可能性もあります。もっともGoogleは、複数のデリケートなトピックをリストから取り除いたり、リストに含めるトピックの選定を外部機関に委ねたりする計画も立てています。
──これまでにどのような反応が見られますか?
ほとんどの反応は憶測の域を出ていません。トライアルはまだ始まっておらず、いつからTopics APIのテストをサードパーティ開発者に許可するのか、Googleはまだ明らかにしていません。
ただし、Topicsの粒度が低いために、広告ターゲティングならではのメリットが限定され、その結果広告価格が上昇しなくなったり、場合によっては下落したりするとの懸念が、広告主やメディアオーナーから上がっています。たいていの広告主は、よりターゲットを絞ることができる広告により多くのお金を払うものです。
また、パブリッシャーと提携しているアドテク企業の幹部らは、Topics APIを統合した場合にユーザーデータの流れをどこまでコントロールできるのかという点について、Googleに明確な説明を求めています。懸念されるのは、サードパーティのウェブサイトが、このAPI経由でパブリッシャーのサイトから抽出したデータを利用して、サードパーティのサイト自体の広告販売を拡大できるかどうかという点です。最終的には、そのサードパーティのウェブサイトが直接のライバルになることも考えられます。
──どのような準備をすればいいのでしょうか?
広告主とパブリッシャーが取りうる戦略のひとつは、ChromeでサードパーティCookieのサポートが廃止される計画が2020年1月に明らかになったときと同じく、ユーザーの同意を得てできるだけ多くのファーストパーティデータを収集するというものです。
パブリッシャーは、ChromeでのサードパーティCookieの無効化を楽観的に受け止め、自社のファーストパーティデータにアクセスできる権利を広告主に販売できるチャンスだと考えています。これに対して広告主は、Cookie廃止後の世界に適応しなければ、オンラインで潜在顧客にリーチする機会を失いかねないというプレッシャーにさらされています。アドテク企業は、Chromeチームの気まぐれの影響をもっとも受けやすいといえるでしょう。そんな彼らにとって最善のアドバイスは、逆境をうまくかわしながら迅速に行動し、必要に応じて方向転換できるよう準備しておくことです。
最終的には、オンライン広告業界のあらゆる階層にいる企業がGoogleと協力し、前に進む準備に取りかかる必要があります。Googleがこの業界を支配している状況に批判や不満を述べているだけでは、すぐに分け前を得られることはないでしょう。
[原文:WTF is Google’s Topics?]
RONAN SHIELDS and TIM PETERSON(翻訳:佐藤 卓/ガリレオ、編集:長田真)