「ジャガイモ・建築・シミュレーション」マリオ・カルポ✕豊田啓介:Redesigning Tokyo 対話3「Programming」 « WIRED.jp
2014年9月に日本語版も刊行された著書(『アルファベット そして アルゴリズム』)で、あなたは「デジタルターン」について述べていますが、その後の発言などを聞いていると、「セカンド・デジタルターン」ということをさかんに仰っています。これはいったいどのようなものなのでしょう?
90年代に起きたデジタルターンで、わたしたちはコンピューターを手にし、デザインと製造がシームレスに接続する環境を手に入れました。その結果、同じものを100個つくっても、100種類のものを1個ずつつくっても理論的にはコストは同じになりました。これは、コピーを多くつくればつくるほど1つは安くなるという大量生産のやり方とは根本的に異なるものです。
90年代の建築を見てみると、丸い形状のものが多いことがわかります。例えばフランク・ゲーリーの作品。その丸さがデジタル技術を世に知らしめることになったわけですが、じつはこの形状とデジタル技術による生産革命の間には相関関係はありません。では、なぜ丸かったのでしょうか。理由は、そのころの建築の多くが「スプライン」に基づいて設計されていたからなのです。
スプラインというのは、整列されていない点を滑らかに結ぶカーヴのことで、数百年前から船の設計などに使われ、1950年代に計算法が確立されると、飛行機や自動車にも使われるようになったものです。その計算は、非常に複雑で当時は数学者しか扱えなかったのですが、メインフレームが登場するとゼネラルモーターズ(GM)のような巨大企業が扱うようになり、90年代にPC革命が起きると、誰でもソフトウェアを使ってスプラインを描けるようになりました。初期のデザイナーはそれに夢中になり、建築からミネラルウォーターのボトルにまで使いました。しかしいま、スプラインはメインストリームではなくなりつつあり、いまの建築には、滑らかさよりも分離や離散を強調する傾向が見られるようになっています。それが「セカンド・デジタルターン」です。