「皇帝にふさわしい一台」東芝のパソコン付きロールス・ロイス !?(octane.jp) - Yahoo!ニュース
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9コメント9件Robin Adams (C) 2018 Courtesy of RM Sotheby's
かつて自動車の世界では、シャシーとエンジンは好きなメーカーから購入し、ボディはコーチビルダーに依頼して厳密な仕様で作られていた。この伝統は、近代的な製造業の出現とユニボディ・デザインの大量採用により、廃れていってしまった。しかし、今からそう遠くない1989年、フーパー&カンパニーはこのロールス・ロイス シルバースピリットにコーチビルドの魔法をかけていた。【画像】コンピューターにプリンターまで!当時の最新機器を搭載(写真18点)フーパー社はもともと、その独創性と細部への美しいこだわりが評価され、英国王室御用達のコーチビルダーとして君臨していた。1805年から1959年まで、馬とモーターで走る豪華な馬車を特注で製作し、大きな成功を収めたのだ。1805年にはアダムス・アンド・フーパー社として設立され、1830年から王室御用達となり、ウィリアム4世、ヴィクトリア女王、エドワード7世に優雅な馬車を供給していた。20世紀に入ってからは、モーターボディに移行している。最初のロイヤルカーは、1900年3月28日にサンドリンガムに納車されたダイムラーのシャシーにフーパーのボディを載せたものである。このカラーリングは、20世紀に入っても王室のために製作が続けられた。第一次世界大戦中、フーパーは航空機製造に転じ、最終的にソッピース・キャメル(複葉戦闘機)を1日3台のペースで生産するようになった。平和になると、再び馬車製造に戻る。1930年代の世界恐慌を乗り越え、西ロンドンのアクトンに第2工場を建設したほどである。ピーク時の1936年には、300台以上のボディが製造されたといわれている。1940年、ダイムラー社に買収され、BSAグループの一員となっている。1980年代にはカナダの実業家ジョン・ディック率いるチームによってブランドが復活し、現代のロールスロイスやベントレーをベースに、世界中の富裕層向けに極めてユニークなワンオフ作品を製作するようになった。その中でも、スティーブン・ベリー率いる21人の投資家が出資するオーストラリアの慈善団体「シルバー・レディ・トラスト」が依頼したこの車「エンペラー・ステート・ランドーレット」は、驚くべき作品である。ロールス・ロイス シルバースピリットをベースに、メイソンズブラックとロイヤルクラレットが組み合わされたこの車は、シャシーが延長され、新しい特注のリアドアと窓ガラスに、昔のパレード車のように、取り外し可能なセンターパネルと折りたたみ式ランドレットトップを備えた高いルーフラインを備えていた。プロモーション用にドアは開いた状態でロックすることができ、「By Appointment」のトレッドプレートも磨き上げられた。ベロアの内装に杉板で染めたウォールナット材を配し、4人が座れる「カンバセーション・ピット」と呼ばれる空間には、1989年当時としては最新鋭のエンターテインメント機器と通信機器が備えられている。アームレストのフィリップス液晶カラーテレビ、フィリップス984ラジオとコンパクトディスクプレーヤー、東芝のコンピューターとプリンター、クリスタル製のフルートとタンブラー、冷蔵庫はトランクに収められていた。コンピューターこそ今となっては古いものだが、イマドキの"在宅ワーク"にはうってつけの空間だ。このエンペラーは1991年に完成し、ヨーロッパ各地で展示された後、1992年末にオーストラリアに渡り、1993年のブリスベン、メルボルン、パースのモーターショーに出展された。「夢の戦車」と呼ばれたこの車は、チャリティーのために使われ、幸運な当選者にはこの車でヨーロッパを旅行することが計画されていたようである。その後、1994年にフーパー社がこの車を入手し、2010年まで同社のコレクションとして管理されていた。その後、スイスで所有された後、3代目のオーナーであるカルメット・コレクションに買い取られた。2019年から4人目のオーナーになっており、現在アメリカで開催中のオークションに出品されている。カタログ掲載時の走行距離は13,140マイル、オリジナルのアクセサリーや付属品もそのままで、ほぼオリジナルの素晴らしいコンディションを保っているこの車は、まさに「夢の戦車」であり、これまでに製造された最も素晴らしいモダンなロールス・ロイスのひとつで、皇帝にふさわしい乗り物といえよう。推定落札価格は、17万5000~25万ドル(約2012~2875万円)となっている。Robin Adams (C) 2018 Courtesy of RM Sotheby's
Octane Japan 編集部
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