USB-C対応のモニターが増えているのは何故?

せっかくHDMIでまとまったと思ったのに

テレビやモニターにHDMIが普及して結構経ちますよね。ポートの形とかで多少面倒なこともありますが、HDMIケーブルさえあれば大抵のモニターとテレビや他のデバイスをつなげることができるようになりましたが、実はそんな状況が少しずつ変わりつつあります。えー! 折角悩まなくて良くなったと思ったのに! 米GizmodoのDavid Nield氏が解説してくれています。


ビデオの入出力に関してようやく業界全体が一つの規格でまとまったと思いきや、また色々とややこしくする現象が。現在、USB-CがモダンなPCやゲーミングモニターの出力ポートの座でHDMIや他のポートと争っているのです。今回はそれがどうして起こっているのか、長期的にどういうメリットやデメリットがあるのかを説明したいと思います。

USB-Cモニターの盛り上がりに関して一つ理解しておくべきことは、USB-Cとは、厳密にいえば、ポートの物理的インターフェースの規格であり、ケーブルを使ってポートにデータを転送する規格(プロトコル)とはまったく別、ということです。つまり、USB-Cポートにつなぐケーブルは大抵がUSB技術を使っていますが、ビデオやモニターに関しては必ずしもそうではないということです(USBはそういったことが苦手なので)。

USB-Cポートはさまざまな出力規格に対応でき、取り回しがいい

USB-Cポートにはさまざまなオーディオやディスプレイ用プロトコルを流すケーブルに対応しているものがあります。例えば、Thunderbolt、DisplayPort、それにHDMI(前者2つよりは稀ですが)も可能です。この汎用性こそ、メーカーがHDMIの代わりにUSB-Cポートを使いたがる理由の一つです。

USB-C対応のモニターが増えているのは何故?

理由は他にもあります。USB-CポートはHDMIポートより小さいので、スペースをそこまでとりません(これはモニターよりラップトップにとって重要ですが)。それにUSB-Cは、HDMIと違って差し込む時の上下の方向を気にしません。モニターの後ろに手を回して差し込もうとする時はUSB-Cの方が便利でしょう。それに、USB-Cケーブルの方が長い距離でもちゃんと動作しますしね。

さらにボーナスとして、USB-Cポートを利用していると、ビデオやオーディオ以外のものも伝達できます。例えば、ラップトップからモニターにつないでいて、モニターのタッチスクリーンへの入力情報をラップトップに伝達したりといった利用方法が考えられます。また、モニターとつないだUSB-Cケーブルは他のデバイスを充電したり、データをやりとりしたりできるので、USB-Cハブのように使うことができるでしょう。

汎用性、コンパクトさ、使い勝手の良さ。これらUSB-Cの利点が理由で、ラップトップ、特に薄くて軽いモデルではUSB-Cが非常に普及しています。そしてモニターのメーカーも最も大きなユーザー層に向けて製品を作ろうとするので、自然とモニター側でもUSB-Cポートの採用が増えて来るわけです。

USB-Cポートが対応する規格は確認しておくべし

最近のMacBookはUSB-Cを通じたThunderbolt 3でビデオ出力が可能で、一方最近のSurfaceもUSB-Cを通じたDisplayPort 1.4で出力できます。フルサイズのHDMIポートでは、ラップトップを小さくするのが難しいのです。

USB-Cを通じたビデオ出力はユーザーにとっても選択肢を増やしてくれましたが、混乱も増えてしまいました。USB-Cモニターを選んでいる、またはUSB-CかHDMIモニターのどちらにしようか悩んでいる方にちょっと注意していただきたいのですが、対応が非常にややこしいことになっているので、事前調査をしっかり行ってください。まず手始めにビデオのソース(おそらくラップトップだと思います)から、どういう形でビデオを出力できるのかを確かめてください。

混乱の元になっているのは、すべてのUSB-Cポートが同じではないということです。差込口が同じだからといって、それだけでは参考になりません。すべてのUSB-Cポートが他のデバイスを充電できるわけではないし、ビデオを出力(または入力)できるわけでもありません。すべてはメーカーのデザイン次第なのです。

これはケーブルに関しても同じです。スマホを充電できるUSB-Cケーブルが、ラップトップからモニターに映像を出力してくれるとは限りません。商品を選んでいるときにハッキリ書いておいて欲しいものですが、書いていないことも多いので、購入の際には十分注意してください。(補足:MacBook ProのUSB-CポートはThunderbolt 3に対応しているので、それを利用してモニター出力したいならケーブルもThunderbolt 3対応のものを買う必要があるといった具合)

つまり、ビデオ出力できるUSB-Cポートがあるからと言って、USB-Cモニターに直接つなぐだけでいいとは限りません。例えばGoogle Pixelbookがいい例で、途中でアダプターを噛ませる必要があります。

ラップトップ、ケーブル、モニターを探すときは、「Alt Mode」という言葉に注目してください。これは、USB-C接続でUSB以外のデータを通信するために必要なものです(Thunderbolt、DisplayPortオーディオ、映像出力を含む)。運が良ければUSB-Cケーブル一本で接続できますが、そうでないならアダプターが必要になります。

USB-Cがもっと普及すれば複雑な状況が変化するかも

もちろん、HDMIもバージョンやケーブルの違い、ハードウェアの対応などで問題はありますが、USB-Cはまるで複雑さの面でHDMIを意図的に超えようとしているかのようです。例えば、Microsoft SurfaceのUSB-Cビデオ出力に関する、この途方にくれそうな(そしてしっかり調査された)ガイドを見てみてください。あるいは、ハブを追加することでUSB-Cを通じたビデオの品質にどう影響があるのかを細かく、非常に細部まで説明した(非常に難解な)ガイドをご覧ください。

ショッピングの時のイライラや混乱はともかく、HDMI規格がモニター(やテレビ)から消えることはまだ暫くないでしょう。ゲームコンソールやブルーレイプレーヤーやケーブルボックスなど、HDMI規格が必要なデバイスが山ほどあるからです。しかし、ラップトップからはHDMIはどんどんなくなっていくでしょう。メーカーはもっとスペースを確保したいし、ユーザーが必要ならUSB-Cドングルやハブがいくらでもあると分かっているからです。

ビデオデータのやりとりまで可能にした結果、それまではデバイス同士をつなげたり充電したりするのに非常にシンプルで簡単だった規格が、ここまで複雑になってしまったのは残念です。しかし、古いデバイスが去り、USB-Cがより普及することで、もっと分かりやすくなることを期待しています。今覚えておかなければいけないのは、一見簡単そうに見えるラップトップやモニターのUSB-Cポートですが、さまざまな役割がある可能性があるので、説明書などを見てしっかり調べることです。

関連記事