多様化する映像クリエイターの制作スタイルを訊く『Videographer’s File<ビデオグラファーズ・ファイル>』大畑貴耶

大畑貴耶

映像ディレクター・カメラマン。大阪芸術大学にて映画制作を専攻。その後、関西を拠点にミュージックビデオなどの自主制作を開始。上京後、株式会社 isai 入社。現在はミュージックビデオ・webCM 等を中心に制作活動中。

WEB●http://isai-inc.co.jp/https://www.takayaohata.com/

取材・文●松岡佳枝

大畑貴耶さんの作品

レーベルとの打ち合わせで白ホリのスタジオでプロジェクターを投影し撮影したいというアイデアがあり、そこから構成を組み立てていった。大畑さんは監督のほか、撮影も担当。

悪魔のいたずらを描いたストーリー仕立ての構成で大畑さんは監督に徹した作品。1フロアで4部屋あるシチュエーションを探すため、ロケ地探しに苦労したという。

多様化する映像クリエイターの制作スタイルを訊く『Videographer’s File<ビデオグラファーズ・ファイル>』大畑貴耶

映画好きが結果として 高じて映像の道へ

大畑貴耶さんは映像制作会社isaiに所属する。MVやWEB CMをメインに活動している。そんな大畑さんが映像を始めたきっかけについて聞いてみた。

「映画はとても好きでした。高校生の頃は友人達とのたわいもない日常を携帯電話のカメラで撮るのが好きだったんです。その後、スマートフォンが出てきて、撮った動画に音楽をつけたりしていました。スマホの中だけで動画を作るのが窮屈になって、高校2年生のときに遊園地でアルバイトをして、お金を貯め、iMacを買いました。スマホで撮影したものをわざわざiMacに取り込んで編集していました(笑)」

その後進学した大阪芸大ではフィルムでの撮影実習や自分たちで予算を出し合っての映像製作もあったという。「16mmフィルムで10分程の短編を撮る必修の授業があったんです。実際の映画撮影のように人員を自分で集めて、チームを作り製作を行なったりしましたね。それが今の基礎体力にもなっていると思います」

現在の主戦場となっているMVを撮るきっかけになったのはなんだったのだろう?

「音楽製作をしていた先輩が、アイドルとEDMやハードコアなど異ジャンルを掛け合わせ、そういったものを浸透させていくには、映像ツールが不可欠だと話してくれたんです。現在isaiにも一緒に所属している同期がEOS 5D Mark Ⅱを買ったところだったので、撮ってみましょうということになって。小さなスタジオで撮影しました。これが初めてだったのですが、デジタル一眼、結構イケるなって(笑)。それ以来、大阪にいるインディーズのバンドや、知人に声をかけ、半分は練習の気持ちで撮影しました。監督だけでなく、僕が機材好きということもあって、撮影もしていました」

機材選びの基準はどんな点にあるのか伺ってみた。

「自分が撮影するときは扱えるものを選んでいるのですが、得意なカメラはFS7ですね。URSA Mini Proはきちんとライティングが作り込めるときに使います」

日頃の現場では演出に加えてカメラも回すことも多いが、go! go! vanillasの『No.999』のMVでは演出に専念したという。

「自分で出した企画だったんですが、すごく大変で。自分でもビックリしました(笑)。セットだけでなく、予算面や撮影時間も大きく押してしまったりして。でも照明の色などにもこだわって撮りましたね。ディレクションだけというのは贅沢な仕事でさまざまな方と連携して仕事ができたことがすごく嬉しかったですね」

よく使うカメラはソニーFS7、α7S Ⅱ、ブラックマジックデザインURSA Mini Pro(その他もレンタルで運用)。MVやWEB CMはシネマカメラを使うことが多い。ライブ撮影ではビデオカメラも活用する。MVではルックに個性を出すためにコーティングを剥がしたオールドレンズ(写真2枚目)を活用したり、色付きのフィルターや様々な形状のクリスタルプリズム(写真3枚目)をレンズ前にかざしたりと、フレア表現にも気を遣う。また、SHOGUN INFERNOにはSmallRigのケージやVマウントバッテリーアダプターを取り付け長時間使えるように工夫している(写真4枚目)。

▲ミュージックビデオでのドラマシーンのメイキング風景。シーンがたくさん必要な企画の場合でも、少人数で一気に撮影していく。

●ビデオSALON2019年7月号より転載

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