【EDIX関西2018】未来の教育を支える日本マイクロソフト…先生、学生による事例紹介も

2018年5月の東京開催に続き、11月7日から9日にインテックス大阪でも教育ITソリューションEXPO、通称「EDIX」が開催された。関西での開催は今年で2回目。2020年の教育改革に向け、現場ではすでに改革準備が始まっている。来場した多くの教育関係者を見ると、教育改革の波が全国に広がっていることを感じる。多くの来場者が足を止めていたのは、ソフトとハード両面にわたっての教育ITソリューションとその実例を紹介する日本マイクロソフトのブース。最新の「Microsoft Surface Go」を中心に、教育現場をサポートするさまざまなプロダクトが、実際の使い方や授業事例を交えながら紹介されていた。そのようすを取材した。

「3つの学校改革をサポートする」をテーマとした日本マイクロソフトの出展ブース

学校のあらゆる悩みを解決し、より快適な教育環境へ

ジャージ姿のスタッフが行きかう、温かみのある設えのブースに足を踏み入れると、セッション用ステージの背景に「子どもたちの学び方」「先生の教え方」「学校での働き方」との文字が大きく掲げられている。新しい学習指導要領に基づく授業をしていくために、子どもたちの学びへのサポート、教材作成や授業を進めていく上での教職員へのサポートはもちろん、近年問われ続けている学校での働き方改革をもサポートするというのが、今回のテーマだ。ブース内を案内してくれたのは、日本マイクロソフト・文教担当部長である春日井良隆氏と、同社Surfaceビジネス本部・シニアプロダクトマーケティングマネージャーである土屋奈緒子氏。
取材に応じる日本マイクロソフト・春日井良隆氏と土屋奈緒子氏
この3つの柱に対し、日本マイクロソフトではソフト・ハードともにソリューションを提案している。ソフト面では、教務や校務だけでなく、校内のデバイスの管理に必要な一式をパッケージングした「Microsoft 365 Education」。「Microsoft 365」とは、OSとなる「Windows 10」、クラウドサービスである「Office 365」 、セキュリティ機能とデバイス管理をそなえた「Enterprise Mobility+Security」、そして子どもたちに大人気のプログラミング教材Minecraft(マインクラフト)の教育版である「Minecraft: Education Edition」を組み合わせた統合ソリューションを指す。教務や校務で実際に使われるクライドサービス「Office 365」は、Word(ワード)、Excel(エクセル)、PowerPoint(パワーポイント)をはじめとして、一般でもすでに馴染みのあるツールだろう。他にも教育に活用できるツールや機能が多数そなわっている。音声読み上げやAIを使った自動翻訳機能である「イマーシブリーダー」は、英語教育にも有効だ。音楽・美術や部活の発表、学校PRムービーの制作にも活用できそうなStream(ストリーム)、小テストやアンケートが簡単に作れるForms(フォームス)、容量を気にせずに教材や資料を保管できるOneDrive(ワンドライブ)など、魅力的なサービスが追加されている。より快適に、より充実した教育を提供できるように随時アップデートしているそうだ。
「Office 365 Education」に含まれる豊富なアプリおよびサービス

子どもたちの協働学習をサポート

まず「子どもたちの学び方」のサポート例として、新学習指導要領で取り上げている協働学習についてみてみよう。「Office 365 Education」に含まれる「Teams」(チームズ)は、グループに登録したメンバー同士がオンラインでコミュニケーションを図ることのできるツールである。「あらかじめ生徒たちのアカウントを登録しておけば、学年ごと、選択授業のクラスごと、部活動ごとなど、自由に複数のグルーピングができますし、そのグループに対して先生が一斉に連絡をしたり、課題を出すことが可能です。子どもたち同士のグループも作れますが、先生が管理者としてモニタリングすることもできます。」(春日井氏)また同じく「Office 365 Education」に含まれる「Word」や「Excel」では、共同編集機能が充実している。「班ごとに学校新聞を作成する」という課題のもと、生徒複数人が同じファイルを共有しながら同時に編集するといったコラボレーション作業も可能になる。
「『Office 365 Education』のサービスを活用することで学びの可能性が広がる」と話す春日井氏
ここで「Office 365」の能力を最大限に発揮できるハードとして「Microsoft Surface Go」を紹介したい。キーボードを付けてノートPCとしても、キーボードをはずしてタブレットとしても使える。正面にも背面にもカメラがあることも特徴のひとつである。さらに、別売りの「Surface ペン」を使用すれば、WordやPowerPointで作成している資料に手書きで書き込むことができ、スライド送りのクリッカーとしてプレゼンテーションの場面でも活用できる。「ICT教育を推進する文部科学省が推奨しているのが、キーボードや背面カメラが付いていることです。教育現場での利用を想定したときに、サイズ感や重量だけでなく、それらの条件を満たすデバイスとして『Microsoft Surface Go』はもっとも適していると考えています。」(土屋氏)授業での活用事例をみてみよう。たとえば「サツマイモの観察日記をつける」という授業に際して、子どもたちは「Microsoft Surface Go」を屋外に持ち出し、背面カメラを使って、生育中のサツマイモの写真を撮る。「Office 365 Education」中の「OneNote」に取り込み、「芽が出た」「2cm成長した」のようにペンでメモを書き込めば、手軽に日記をつけることができる。
「OneNote」で共同編集されたさつまいもの観察日記
また「日本各地に生息する生き物」というテーマで、クラス全員で共同の調べ学習を行うとする。同じく「OneNote」に先生が日本地図を貼り付け、全員のアカウントに共有しておくと、生徒たちが次々と画像や写真を追加で貼り付けていく。ペンを使って、生物名や生態などの情報を手書きで追記することもできる。学校の敷地内にいる身近な生き物も、背面カメラで撮影してそのまま貼り付けることも可能だ。

新しい教え方に挑戦する先生をサポート

続いて「先生の教え方」のサポート例を紹介したい。ICTを利用した新しい授業スタイルが求められるようになるだけに、現場の先生からは不安に思う声もよく聞かれる。教材作りをはじめとする授業準備の手間も懸念のひとつだろう。春日井氏にご紹介いただいたのは「PowerPoint」を使った教材作りだ。Word、Excel、PowerPointには、イラスト、アニメーションなどのフリー素材を挿入できる機能があるのをご存知だろうか。ライブラリをパッと見ただけでも、その素材の充実ぶりがわかる。授業に活用できそうな素材も豊富。しかも、最新版では3Dの素材を挿入できる。たとえば、地層のプレートの動きを示す3Dアニメーションは、地震がどのように発生するのかを説明する際に重宝しそうだ。
マイクロソフトが提供するフリー素材を活用した「地層」を説明する教材
自分でアニメーションや画像を一から作成する必要はない。あらかじめオンライン上にライブラリが用意され、多くの画像やアニメーションが自由に利用可能となっていることを知ってほしい。「Office 365 Education」では、ソフトのメニューから「挿入」を選択し、「3D」「教育向けアニメーション」とタップすることで、ライブラリが表示され、素材を探すことができる。「たとえばDNAの二重らせん構造など、言葉や静止画では説明しにくいものも、実際のモデル図があれば構造をつかみやすいと思います。先生がこの図に『ここがT、こちらがA』などペンで記入していけば、子どもたちの手元のパソコンでも同時に閲覧することが可能です。図をタップして動かすこともできるので、360度回転させながら理解を促すこともできます。」(春日井氏)作成したプリント類の配布にも授業冒頭の一定時間を要する。「Office 365 Education」では、その手間と時間を省くことも可能だ。これまで印刷して配布していた課題のプリントを、オンラインで簡単に共有ができるため、子どもたちも手元のデバイスで即座に確認できる。理科の選択授業を受けていた人だけ、5年4組だけ、といったグルーピングを行うことで限定配信も叶う。土屋氏は「これからの教員を育成する教員養成系の大学や教育学部で『Office 365 Education』および『Surface』シリーズを導入いただくことが増えています。卒業後、教育現場でスムーズにICT活用授業を実践できるように、大学の授業で新しい授業スタイルを学ぶことが多くなっているのです。」と話す。
ブース内のデモンストレーションステージでは全国各地の先生や学生による活用事例紹介が開催されていた
ブース内に設営されたステージでは、導入校の先生によるさまざまな事例紹介が行われていた。ちょうど取材の時間で登壇されていたのは、青山学院初等部教諭の井村裕氏。青山学院初等部でのタブレットを活用した協働学習や、1人1台のタブレット活用の実証実験として子どもたちがSurfaceを使って学ぶようすが紹介された。「初日の11月7日には、山口大学教育学部の学生たちが大学で行っている『Surface』を使った魅力的な授業づくりについて紹介するステージがあり、内蔵カメラで撮影した動画を子供たちに見せながら、ポイントとなる個所ではペンで書きこんで説明する授業のようすを発表してくれました。ほかにも岡山大学や水産大学校の学生が、大学での学びにどのように『Surface』を活用しているかを解説してくれる時間もあり、実際に学生が『Surface』を通してさまざまなスキルを身につけているのを感じられ、とても嬉しく思いました。」(土屋氏)

先生の働き方改革をサポートする

最後に「学校での働き方」のサポート例を紹介する。近年話題にのぼる働き方改革。学校現場も例外ではない。今まで教職員の勤務状況はほとんど可視化されてこなかったのが現実だ。それゆえ長時間労働による過労の問題も未解決のままになることが多かったそう。そうした課題を解決する「働き方を見える化するツール」として、春日井氏が紹介してくれたのが「NoverTi(ノベルティ)」である。これはパートナーであるアーティサンが、マイクロソフトのクラウドコンピューティングサービス「Azure」やデータ視覚化ツール「PowerBI」を使用して開発したもの。ユーザーである教職員は出勤時間と退勤時間をExcelに入力するだけで、教職員の役職や、部活の顧問、教科担任などの属性などを加味して、勤務状況が可視化される仕組みだ。「PowerBI」は「Office 365」に含まれているため、特別なビューワーをインストールする必要がない。教職員向け、学校向け、教育委員会向けに分けて可視化されるので、それぞれの立場から課題がどこにあるのかの発見を容易にしている。
春日井氏曰く「働き方改革のはじめの一歩は、勤務状況の見える化」
「先生は、自分自身の勤務データを一目で知ることができ、生活を見直すこともできますし、学校側も『部活をもっている先生の勤務時間が長い』などの傾向を把握できます。また教育委員会も、どの学校のどの属性の人がどのくらい働いているのかなどを確認できます。まずはデータを可視化することで、気づきが生まれ、改善の可能性が出てくると思います。」(春日井氏)

マイクロソフトが提案するSurface Goとは?

3つをテーマにそのソリューション例を紹介してきたが「Ofiice 365 Education」を含めた「Microsoft Surface Go」の魅力はほかにもある。展示されている実物を手にとってみると、想像以上に軽くて、持ちやすい。ディスプレイのサイズは10インチ、重さは約522gなので、学齢の低い子どもたちでも片手で持ち運びできそうだ。また、ほかのSurfaceシリーズ同様、顔認証が可能なのもひとつのポイントだ。土屋氏曰く「小学校低学年の子どもたちのなかにはタイピングでのパスワード入力が難しい場合もありますが、これなら顔認証でログインできます。Windowsのセキュリティ機能を使っているので安全ですし、何より便利です」とのこと。
「Microsoft Surface Go」の教育現場での活用の可能性を紹介する土屋氏
「学校では共有パソコンを複数人で利用することも多くあります。A君の顔を認証すればA君のアカウントで利用でき、B君で認証すればB君のアカウントで画面が開くといった複数アカウントの切り替えもできます。」(土屋氏)保護者が子どもに与えるはじめてのパソコン選びに悩むのと同じく、学校現場でも先生がデバイスの購入や活用に課題を抱えている。土屋氏は「学校の先生からは、どこに相談したら良いかわからない、どこから購入すべきかわからない、という要望をよく聞きます。教育機関では、文房具や備品の購入を一括してリセラーに任せていることがほとんどです。そこで、そうした教育機関のニーズに応えるべく、提携のリセラーを複数募り『Surface パートナー プログラム for Student』を立ち上げました」との紹介してくれた。このプログラムに加入しているリセラーは、日本マイクロソフト製品の教育現場での活用事例の紹介や提案などのサポートも行っているという。
「Surfaceパートナープログラム for Student」に加盟している企業(2018年12月現在)
日本マイクロソフトは、コンピューター産業の黎明期から今日の第4次産業革命までを支えてきたグローバル企業である。Windows(ウィンドウズ)をベースに、Word、Excel、PowerPointなどさまざまなスタンダードソフトやハードを提供してきた。そうしたノウハウや実績をもとに、さまざまな教育現場の課題解決をはかる提案がこれからも次々と出てくるに違いない。これからの動きに注目したい。

【EDIX関西2018】未来の教育を支える日本マイクロソフト…先生、学生による事例紹介も

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