ニューロスペース 小林 孝徳|「起業家よ眠れ」生産性と幸福度アップの眠る技術10か条・スリープテックのニューロスペース
成功の鍵は睡眠・注目のスリープテック社長の眠りの技術
「眠らないで仕事をする!」「ちゃんと眠ったほうが効率が良い」仕事に情熱をかける起業家の中でも、眠らないでも仕事をやる派と、ちゃんと眠る派があります。
前者はスタートアップの激動期でそうせざるえないケースや、起業でハイテンションになっている場合、極稀な体質であるケースなどです。後者は睡眠や食事、運動など体調を整えることでパフォーマンスを整えるタイプです。
例えばホリエモンこと堀江貴文さんは毎日7,8時間たっぷり睡眠を取ることを優先していることは有名な話です。創業手帳も立ち上げの直後の一時期「寝ないで仕事をする」ということも稀にありましたが、全体には、普通に睡眠をとった方が安定したパフォーマンスが出ています。
立ち上げメンバーの中で長時間労働「睡眠時間を削る派」と集中「寝る派」が分かれて喧嘩するケースも聞くことがあります。日本は世界有数の睡眠時間短い国ですが、世の中全般で言うと、睡眠時間をしっかりとることが徐々に見直されている、経営者は筋トレや食事など体調面に気を使う人も多いです。
経営者の能力のパフォーマンスを構成する重要な土台である「睡眠」について科学的なアプローチをするのがスリープテックです。
日本人が短い睡眠によるメンタル疾患なども多い現状から言うと社会的なインパクトと市場の大きい注目の「眠れる市場」スリープテックの注目株が株式会社二ューロスペース代表取締役社長の小林孝徳さんです。
小林さんに「日本人と眠り」「起業家・経営者が使える眠りの技術」について創業手帳の大久保が聞きました。
小林孝徳(こばやしたかのり)株式会社ニューロスペース 代表取締役社長 CEO1987年⽣まれ、新潟⼤学理学部素粒⼦物理学科卒。受験生から社会人時代まで自身の睡眠障害の経験をきっかけに、この社会問題を解決すべく、2013年12月株式会社ニューロスペースを設立。睡眠の悩みを根本的に解決すべく、大学や医療機関と連携し 『法人向け 睡眠改善プログラム』を開発し、企業で働く多くの従業員の睡眠改善を実現。更に、学校現場でも『睡眠教育』の普及に取り組み、生きる上で大切な知恵である睡眠を教育で学べるよう多くの機関と連携をし進めている。三大欲求の1つである睡眠を、現代の人々がレストランで食事を楽しむのと同じように、一人ひとりが睡眠をデザインし楽しめる世界を目指しています。
【最適睡眠時間】7時間30分【クロノタイプ(睡眠特性)】やや夜型
インタビュアー 大久保幸世創業手帳 株式会社 代表取締役大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計100万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。
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この記事の目次
睡眠不足の悪影響「10秒前に言われたことも忘れてしまう」やばいことに自分では気づけない恐ろしさ
大久保:肉体が頭脳のパフォーマンスに影響を与えるので、経営者は運動や睡眠、食事などに凝る人が普通の人より多い気がします。特に睡眠は重要ですよね。小林さんはスリープテックの事業をされていますが、どういう経緯ではじめたんですか?
小林:元々、起業する前は上場している有名なITベンチャーに勤めていました。その頃から睡眠障害になっていました。毎日4時間ぐらいの睡眠で、明らかに頭脳の働きが悪くなっていた。
例えば上司から10秒前に言われたことを思い出せない、ということもありました。平日寝れず休日ずっと寝ていたりしましたが、自分自身は睡眠不足に気がつけていなかったです。
例えば睡眠では、大まかに言うと前半では体を休める働きがあり、後半のレム睡眠では無意識下で感情や思考を整理する働きがあります。眠りが短いと後半の感情や思考の整理ができていないので、脳のパフォーマンスが悪くなったり、メンタルが悪化するわけです。
自分自身の睡眠障害の経験から他の方でも困っている方が多いと思ってこの事業をはじめました。
大久保:なるほど、人間の脳は睡眠中にパソコンで言うところの再起動や、重くなった時に行うデフラグ(メモリの断片を整理してPCの働きを良くする処理)みたいなことをして働きを回復させているんですね。
PCが重くて動かないと解決方法をググれないみたいなもので、睡眠不足だと、自分ではやばいことに気が付けないということですね。
やばいと自分で気付けるのは自分は客観的に見ることができる高度な判断能力が必要ですが、その判断力が鈍っている。自分自身のパフォーマンスの低下を気づけないほどのパフォーマンスが低下してしまう。考えることすらできなくなるということですね。
小林:その状態では、例えば上司から当たり前の注意をされただけなのに「攻撃されている」というような被害妄想に陥ることもあります。
怒られた(事実)自己否定(情動)ということですが判断力がしっかりしていれば分けて考えることができますが、事実と情動が混ざってしまう。そういった自己否定が積み重なっていって、メンタル疾患もしくはその一歩手前まで追い込まれることも珍しくありません。
また、睡眠不足と肥満も影響があります。睡眠不足で単純に活動時間が長くなるほか、過剰な刺激が欲しくなる。そのため濃い味付けの食べ物をたくさんたべてしまうことになる。睡眠不足に肥満が重なると今度は睡眠時無呼吸症候群のように、呼吸に悪影響が出る。
そうなると酸素が十分取れていないので、眠っていても眠りの質が悪かったり、場合によると命にも関わります。睡眠不足が睡眠だけでなく、食事も含めて体調や生活全体に影響を与えます。
大久保:「仕事ができる・できない」「職場の人間関係が良い・悪い」「仕事が面白い・面白くない」という評価を人はしますが、睡眠が不足していたら、仕事のパフォーマンスは出ませんし、もしかしたら職場の人間関係も睡眠による思考や感情も影響しているかもしれない。
だから睡眠が不足している方は立ち止まって睡眠が取れているかも考えた方が良いかもしれないですね。
小林:仕事のスキルややり方、心の持ち方ではなく、睡眠不足で脳の扁桃体という感情に関係する部位が過剰反応してしまっている状態であれば、本人や会社の努力ではどうにもならないですよね。脳の仕組みの問題ですから。
例えばスペースシャトルやチェルノブイリの事故もヒューマンエラーが原因ですが、実はヒューマンエラーの原因に睡眠不足も大きな影響があったと言われています。睡眠不足によって個人や会社、社会に大きな損失を与えてしまいます。
極稀にショートスリーパーと言われる人もいますが、ほとんどの方はそうではない。「少ししか眠らなくても大丈夫な方法を教えて下さい!」と間違った方向の質問をされることがよくあります。まずは時間量として、しっかりと睡眠を取ることを考えていきましょう。
日本人は世界一睡眠時間が短い
大久保:日本人の長時間労働の習慣と、その反動の睡眠軽視はありそうですね。
小林:日本人はOECDなど各種調査で、睡眠時間では常に最下位。平均よりおよそ1時間短い。OECDの生産性も下位になっています。睡眠だけが生産性低下の原因ではないですが、低い生産性が睡眠時間を削り、さらに生産性を落としていると思います。
日本では睡眠で悩んでいる方は3000万人から4000万人いると言われています。また、日本では睡眠不足と密接な関係のある、うつなどのメンタル疾患が400万人を超えています。
メンタル疾患が深く関わる自殺者は年間3万人以上います。交通事故の死者数が年間3000人ですから10倍ですね。そのメンタル疾患の根底の部分に実は睡眠がかなり影響しています。
大久保:日本の状況はデータからまとめると、
いずれもニワトリ卵の関係で、関連していますから悪循環に陥っているということですね。でも、どうしたらいいんですかね?
良い睡眠を取るおすすめの方法10か条
小林:会社自体で「上司より早く帰れない」みたいな習慣は是非、経営者・管理職の方はまっさきに考えを改めて下さい。会社は会社として個人でできる方法を紹介します。
まず眠りは体質によるのでこれが絶対に正解というものはなく個人の体質に合わせるのが正解です。
例えば超短時間の睡眠でも大丈夫方も1%以下など極稀にいます。ただ多くの方は、真似をしても体調を壊すだけです。また、朝型・夜型などもある程度、体質によって決まっているので、無理をせず自分の体調に合わせるのが正解です。
こういった眠りの体質のパターンをクロノタイプと言います。自分自身はしっかり睡眠を取る必要があり、かつ夜型のタイプです。とはいえ良い眠りを取るために多くの人にとって共通の部分があるので、ここでは読者のプラスになる手軽にできる方法を紹介します。
特にベッドでのスマホはデメリットが多いので避けましょう。
1・ダラダラ見てしまうことで睡眠時間が削られる2・強い光を浴びることでねれなくなってしまう3・脳がベッドを寝る場所で認識しなくなる。
1は分かりやすいですよね。手軽に面白いコンテンツがあるのでついつい見てしまう。また頭が働くことで交感神経が優位になって寝付きにくくなります。
2は脳は光によって朝・夜の区別をしており、強い光を浴びることで脳が覚醒してしまいねれなくなるのです。
3はあまり知られていないですが、人間は場所と行動を紐付けて記憶しており、意識せず行動に影響を与えます。
本来、ベッドや布団=寝る場所というパターンが繰り返されていると、ベッドや布団に入っただけで眠くなりやすい。それが、ベッドでスマホをいじることで、ベッドが寝る場所ではなく、スマホをいじるところと認識してしまうと脳が寝付けなくなってしまうのです。
コーヒーやお茶、エナジードリンクに含まれるカフェインは眠気を感じにくくする効果があります。
夕方以降のカフェインの摂取は眠りに影響を与えます。
眠いのでカフェインの入った飲み物を摂取する。眠れない、寝不足で眠いのでまたカフェインに入った飲料を飲むということにならないようにしましょう。
最近では大量のカフェインと糖分の入ったエナジードリンクも取り過ぎに気をつけましょう。エナジードリンクの飲み過ぎで死亡例がある他、そこまでいかなくてもカフェイン中毒になるケースや、メンタル疾患を悪化させる傾向もあります。
眠れない場合は、カフェインの摂取量と取るタイミングを見直してみましょう。
100ml当たりのカフェイン含有量比較コーヒー 60 mgせん茶 20 mgエナジードリンク32 ~ 300 mg
また、お酒も眠りを浅くさせる傾向があります。お酒を飲むと眠くなりますよね?そのため錯覚しがちですが、アルコールは睡眠自体の質を下げることが分かっています。
お酒を飲むと眠くなるが、実はよく寝れているわけではない。また入眠のためにお酒を使うと徐々に酒量が増えてアルコール依存症になることもあります。お酒は適度にしましょう。
食事は寝る3時間前までに終わらせましょう。食べた直後だと、胃腸が活動し、血糖値も上がる。消化器官に負担をかけずに眠ることが大切です。
お風呂などに入ると体の中心部の深部体温が一時的に上がり、その後下がっていきます。
深部体温の急激な低下は休息・眠りやすい状態を促します。
寝室の光を暖色系にすることで、心が落ち着き眠りやすくなる効果があります。
普通の青白い白色光だと頭が冴えてしまい眠れなくなる原因になります。
朝起きたら太陽の光を浴びることで脳に今、朝だと覚醒させる。そうすると夜眠くなるというサイクルを作りやすくなります。
太陽の光を浴びることで夜に生成されやすくなるメラトニンなども睡眠に影響を与えます。
体を動かすことで眠りやすくなります。
ストレスで悩みごとがあると眠れなくなる要因になります。まずは寝る前は一旦忘れて、リラックスしましょう。
fitbitなど腕につけるような睡眠測定デバイスが普及しています。こうしたデバイスを使って、毎日の睡眠時間と深さを記録しましょう。
意外に寝ている時間が短かったり、深さが足りなかったりということも分かります。自分では気づきにくいのでこういったデバイスを使うことで見えてくるものがあります。
経営者・会社は「眠れる」組織を。睡眠不足の損失は大きい!
小林:睡眠不足などによって会社に出勤していて生産性が低い状態をプレゼンティズム、欠勤や遅刻による損失をアブセンティズムといいます。
会社における睡眠不足の損失は大きいです。
日本だと、上司より早く帰ると良くないという習慣が未だにあったりします。責任ある立場の方は、会社のメンバーが安心して眠れる環境を作りましょう。
スリープテックで起業した経緯
小林:弊社では、会社で組織単位で、デバイスやアプリで眠りを改善する指導や研修をしていますが、組織ごとに風土や習慣を変えるような動きをして眠りによって生産性の向上を目指していただければと思います。
組織で睡眠は軽視されがちです。
またプライベートな部分で個人に委ねられて不健康な状態でも放置されてしまう。でも会社全体の理解や進め方の問題もありますし、習慣は組織から変えたほうが良い。
会社単位で、睡眠をテクノロジーや、会社の体制や研修まで含めて変えることができれば睡眠の問題は本質的な解決に近づくのではないかと思います。
自分自身が不眠で苦しんだので眠りの重要性を皆さんにお伝えし改善しようと思ってこの事業をはじめました。
最初は手金で始めて、途中から投資家がつきました。ビジコンなどに出て外部の方からもアドバイスを貰うようになりました。
自分だけの判断だと、自分は価値があると思っているけど、実際はそうでもないとかもあります。こうした外部のプロとの壁打ちは重要です。
大久保:新事業や起業だと「ユーザーが困っているだろう」という提供者側の勝手な推測ではじめたけど、ニーズと違っていた、ということも多いです。
小林さんの場合は「他者のリサーチ」ではなく、自分自身と会社での強烈な体験、ユーザーの痛みから事業・サービスを作っているのが強いですよね。
小林:今、コロナでリモートワークが普及したりとか、昔の働きを方を見直すきっかけになりました。今までの過ちを繰り返すのではなく、短期的な視点ではなく中長期的に生産性を上げるような働き方が広がっていくお手伝いができればと思っています。
起業を目指す人を支援する創業手帳の冊子版では、チャンスをつかみ事業を成功させた起業家のインタビューを多数掲載しています。新しい知見の情報源としてぜひご活用ください。関連記事テレワークでも社員の「メンタルヘルス」を保つために、経営者がやるべきこと睡眠に必要不可欠な「まくら」で、人々の生活をより良いものに(取材協力:株式会社ニューロスペース 代表取締役社長 CEO 小林孝徳)(編集: 創業手帳編集部)
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