もしや復活? インテル第12世代CoreはM1やRyzenに負けない超高性能らしい #CES2022

Apple(アップル)の脱Intel(インテル)を担ったキーパーソンを引き抜いたし、巻き返しなるか?

インテルはCESでアップルM1とAMD Ryzenに対抗する第12世代Intel Coreモバイルプロセッサ(Alder Lake)を発表。高性能ゲーミングノート向けHシリーズへの全力集中!を印象付けましたね!

逆にHの話ばかりで、高性能超薄型ノート向けCPUの次期Alder Lake-Pシリーズ(消費電力28W)、省電タイプの超モバイルデバイス向けUシリーズ(同15W/9W)はサラリと触れる程度。PやUのノートもCESで早くも登場しましたが、気になる詳細はインテルからの発表待ちとなります。

インテル第12世代ハイブリッドテクノロジーとは?

45W HシリーズCPUは、昨年10月に登場したハイエンドなデスクトップPC向けと同じハイブリッドなレイアウト。

アップルM1と同様に、高性能なPコア(Golden Cove)と省電力なEコア(Gracemont)が混載で、PとE、ふたつ合わせて高速処理とバッテリー持ちの両方を実現。大きめのPコアが高負荷な処理をしている陰で、小さめのEコアがバックグラウンドのタスク処理を行う仕様になっています。

インテルはF1レースカーを例にとって説明。ガソリンがぶ飲みして全力使い切る高性能コアだけ詰め込むより、こんな風に分けたほうがいいのだと話していました。最高時速を出すときはターボエンジン、コーナー切るときは電力というハイブリッドカーみたいなもので、PとEのコアを適材適所で使い分けることでベストな結果を引き出せるというわけです。

混載自体は目新しい技術というわけではありません。Alder Lakeの登場を待つまでもなく、スマホ業界では何年も前から大小混載の実例はありましたし、インテルのLakefield(現在ディスコン)も小規模ながらハイブリッドでした(高性能1コア+省電力4コア)。もっともLakefieldはx86-64へのハイブリッド導入の試験プログラム的な位置付けもあって、採用したのはSamsung(サムスン)Galaxy Book SとLenovo(レノボ)ThinkPad X1 Foldの2機種止まりで、基本タスクの処理のところでつまづくなどの問題もありました。

インテル第12世代Alder LakeのSKUとスペック

その点、第12世代は新しいインテル7プロセス(10nm SuperFinノード)採用なので、そのような問題はありません。当初用意したのはCore i5-12450HからCore i9-12900HKまで8種類です。Hシリーズは最大14コア(Pコア6つ+Eコア8つ)、ターボブースト利用時の最大周波数は5.0GHz。

45W Hシリーズ8種の内訳は次のとおり。

型番コア数(Pコア:Eコア)スレッド数L3キャッシュターボ時最大クロック
Core i9-12900HK14コア(6P:8E)2024MB5.0GHz
Core i9-12900H14コア(6P:8E)2024MB5.0GHz
Core i7-12800H14コア(6P:8E)2024MB4.8GHz
Core i7-12700H14コア(6P:8E)2024MB4.7GHz
Core i7-12650H10コア(6P:4E)1624MB4.7GHz
Core i5-12600H12コア(4P:8E)1618MB4.5GHz
Core i5-12500H12コア(4P:8E)1618MB4.5GHz
Core i5-12450H8コア(4P:4E)1212MB4.4GHz

性能比較は以下に続きますが、ここにある数値はあくまでもインテル社内のテスト結果であり、Gizmodoの検証を経たものではありません。

もしや復活? インテル第12世代CoreはM1やRyzenに負けない超高性能らしい #CES2022

チップメーカーさんはどこもべストに見えるよう取捨選択するものですので、多少値引いて見ないといけないかもですが、一応第12世代HシリーズはアップルM1 Maxをしのぐ「史上最速のモバイルプロセッサ」というのがインテルの公式発表です。

インテル第12世代 vs アップルM1 vs AMD Ryzen

インテルが比較で使ったのは最上位のCore i9-12900HK。次の端末で比べました。

Core i9 CPU&RTX 3080 GPU搭載:MSI GE76 Raider

M1 Max搭載: MacBook Pro 16

Ryzen 9 5900HK CPU&RTX 3080搭載:Lenovo Legion

結果は見ての通り、Core i9の大勝利。

PugetBench Premiere Proのベンチでも、PugetBench Lightroom Classicのベンチでも、競合を抑えているのがわかります。前世代のCore i9-11980HKと比べても、それぞれ44%、10%の性能向上。Autodesk Autocadのベンチでも前世代から14%の性能向上が確認されました。

インテルは高性能Hシリーズに注力中なので、Hが駆動するふたつの製品カテゴリのひとつであるゲーミングノートも気になるところですが(もうひとつはコンテンツクリエイター向けノート)、こちらもインテルの青組が善戦していて、第12世代でわずかながら差を広げています。

『Assassin’s Creed: Valhalla』や『Gears 5』、『GTA V』といったゲームではそんなに大きな性能向上は見られなかったけど、『Hitman 3』、『League of Legends』、『F1 2021』では第11世代から大躍進しており、Alder Lakeに最適化したゲームでは最大28%のスピードアップが認められたとインテル。『Hitman 3』ではFPSが最大8%アップしたりもしてます。

まあ、新型チップはとかく処理性能と省電性能のふたつで判断してしまいがちですが、ほかにも大事な要素はありますし、これから買うノートPCでもっと重要なのは、新型チップでどんなテクノロジーが実現するか。インテル第12世代の場合、それはWi-Fi 6E、DDR5のメモリ、Thunderbolt 4に相当します。

インテル第12世代モバイル版ではWi-Fi 6E、DDR5などが実現

Wi-Fi 6は2.4GHz帯、5GHz帯、拡張版のWi-Fi 6Eは第3の6GHz帯にも対応範囲が広がっています。理論上の処理スピードは9.6Gbpsのままですが、Wi-Fi 6Eで見逃せないのはもっと(最大60まで)チャンネル数を増やせること。つまり、より幅広い帯域とキャパに対応できるため、何十台ものコネクテッドデバイスすべてが、ルータへの高速かつ安定した接続を確保できるんですね。少なくとも理想の条件下では。利用にはWi-Fi 6のルータは使えないので、Wi-Fi 6Eのルータが必要。しかもこれがバカ高くて(だいたい6万円から)、仮に揃えたとしても6GHz帯はカバーエリアがまだ限られていたりしますけどね…。

買ってすぐ違いを実感できるのは、むしろ今後発売になる(ハイエンドな)ノートPCに搭載予定のDDR5のほうかもしれません。MSIからは需要に追い付かないよーって言われてたけど、今のところ入手性はなんとかなってるようで、CESで発表になったノートPCはほぼすべてDDR5のメモリが搭載になってました。DDR5では4.8Gbpsから6.5Gbpsにデータ転送速度が大幅UP(DDR4は最大3.2Gbps)するなどの性能向上が見込めるほか、消費電力控えめなので、バッテリー駆動時間がずっと長くなることが期待できそうです。気になるバッテリー寿命とグラフィックス性能については割愛とします。前者に質問が及ぶと、インテルからは「ランタイムが伸びるかどうかはシステム側のことであり、チップが直接関係するとは限らない」との回答でしたので。後者に関しても、Hシリーズ搭載システムは外部グラフィックボードに依存するものが主流で、中にはインテル製ハイエンドグラフィックスArc採用のものも出そうなんですが、こうしたシステムではゲームや3Dシミュレーションを使わないときには、内部GPUのIris Xeの処理に切り替わりますからね。

第12世代デスクトップ版チップはPCIe 5に対応していますが、上記モバイル版で対応するのはPCIe Gen 4に限られます。インテルに尋ねてみたら、これはコストダウンのためだというお話でした。確認用のPCIe Gen 5が入手困難なことも一因らしいです。

インテル新Evoプログラムで推進するのはリモワ機能

これまで超小型ノートに出番が限られていたインテルUシリーズが、インテルEvoプログラムでは高性能ノートPCにも拡大されます。WindowsのPCを触っていると、パームレストのところに「Evo」というシールが貼られていたりしますが、これがインテルの規格(処理性能、バッテリー寿命、最新機能)をクリアした目印。 第12世代チップ発表に併せて規格も一新。

ご覧のように、Evo第2バージョンが携帯性重視だったのに対し、第3バージョンではコラボの最低ラインを明確に打ち出しています。右側はスペックの新基準で、Wi-Fi 6Eへの対応や、ビデオチャット中の背景ノイズを抑えるインテルのAI技術もあれば、高品質なマイクやフルHD(1080p)のWebカメラといった、かなり具体的なものもあります。もっともフルHDのカメラについては、デザイン的な問題(ベゼルが超薄いとか)で搭載できない場合もあるだろうから、全システムに適用されるわけではないというインテルのお話でしたので、Evoの要件はかなり流動的と言えそう。

なお、新Evoプログラムは折りたたみ画面を念頭に組まれたものです。該当する製品は今のところレノボThinkPad X1 Foldだけですけど、インテルはもっと出ると考えていることがわかります。

今後どうなる?

CES 2022ではもうじき発売予定のインテル第12世代チップ搭載ノートが多数発表されました。あと何週間かでレビュー機が届き次第、Hシリーズチップの性能をアップルMシリーズ、AMD Ryzenと比べてテストできると思います。先行リークのスペック表ではインテル復活は歴然ですが、バッテリーの減り具合も見ながら、早くテストしたいですね。

第12世代はWi-Fi 6EとDDR5のメモリに対応するので、今度買うノートは長く使えそう。Thunderbolt 4に対応していることも、引き続きAMDにはないIntelのアドバンテージといえます。

なお、今回発表のHシリーズは高負荷トラフィックのゲーマー、プロフェッショナル向けです。仕事や学校、旅行で使えるハンディなノート(Dellの新型XPS 13 Plusなど)を求めるその他大勢が気になるのはインテルPシリーズやUシリーズのチップかな。詳細は近日発表予定なので、そちらもお楽しみに☆彡

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