友人の死を機に毎月健診 ビジネスは旅、健康管理が鍵 マネックスグループ松本大社長
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5コメント5件松本大 マネックスグループ社長
新型コロナウイルス禍を機に、在宅勤務やテレワークが普及したことで、運動不足が大きな社会課題となり、健康への関心も高まっています。ビジネスパーソンと健康について、マネックスグループ社長の松本大氏に語ってもらいました。
同級生の死を機に「血液検査マニア」
突然ですが、私は「血液検査マニア」です。ほぼ毎月、掛かり付けのクリニックで血液検査をしています。「え、毎月? 自分は年に1度の健康診断の時だけだけど……」という方がほとんどでしょう。私もかつてはそうでした。毎月検査するようになったのは5年ほど前、開成中学からの同級生が突然亡くなってしまったのがきっかけです。彼は持病もなく、健康そのものという感じでしたから、本当に信じられない思いでした。 彼は亡くなる2カ月ほど前に風邪のような症状があったため、医師に処方された風邪薬を飲んでいたそうです。その後も不調は続いていたものの、それほど深刻ではなかったため、普段通りに過ごしていて、亡くなる前の晩も家族と普通に夕食をとっていたといいます。ところが翌朝、いきなり帰らぬ人となってしまった。死因は「肝膿瘍(のうよう)」。私も初めて知る病名でしたが、葬儀に集まった医者の同級生たちから、肝膿瘍とは何かの原因で肝臓に細菌や原虫などが侵入し、増殖して膿(うみ)がたまってしまう病気だと聞きました。 「2カ月の間に1度でも血液検査をしていれば、白血球などの数値に異常が出たはず。そこで精密検査をしていれば、きっと助かったのに」。医者の同級生たちは悔しそうに言っていました。医学の進歩で、多くの病気は早期に発見できれば、治療できるようになっています。そんな時代に生きているのですから、自分でリスク回避できるならした方がいい。そう考えて毎月、血液検査をするようになりました。 毎月チェックするのは、いいことずくめです。移動平均のグラフのように、長期的な傾向がつかめますから、何かの数値が平均線からちょっとずれた時に、うぐいす張り(城や寺などで侵入者を察知するため、歩くと音がする床)のように異常をすぐに発見できます。それに月に1度は掛かり付け医に会うので、些細(ささい)なことでもすぐ相談できますし、体調を崩しがちな出張の前などにはサプリのような薬も処方してもらえるので安心です。 健康診断の直前だけ、お行儀の良い生活をして、異常が見つからなかったと胸をなで下ろしている人がいますが、あれは時間とお金の無駄だと思います。私は健康チェックもコンピューターシステムのチェックと同様に、負荷をかけてやってこそ意味があるという変な信念を持っているので、以前から健康診断の前日にはわざとたくさん食べてお酒も飲んでいました。毎月検査するようになってからは、検査日を特に意識することもなくなったので、極めて普段通りに飲み過ぎの日もあれば寝不足の日もあるという状態で受けています。 私のやり方は極端かもしれませんが、ビジネスパーソンにとって自分の健康状態に敏感であることはとても大事だと思います。自分のデータをよく知っていれば、「最近、基礎代謝が落ちているから筋肉をつける運動をしよう」とか「どこそこの調子がイマイチ良くないのでケアしておこう」とか気を付けることができます。 そうしていれば、突然どうにもならない事態が発生することは避けられるでしょう。自分の体なのだから、自分でケアする。当たり前のことなのですが、案外おろそかにしている人が多いのではないでしょうか。私は今では「松本さんほど自分の体に詳しい人はあまりいませんよ」と医者からお墨付きをもらえるようになりました。
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最終更新:NIKKEI STYLE