「iPad Pro」はM1チップで圧倒的な性能を手にしたが、ソフトウェアが追いついていない:製品レヴュー

例年通りに新しい「iPad Pro」が発売された。アップルの最新のタブレット端末は、この1年ちょっとでどれだけ進歩を遂げたのだろうか?

少しややこしい話をしよう。いくつかの点で大きな進化があるものの、アップルのソフトウェアが足を引っ張っていてハードウェアの性能を十分に発揮できていないのだ。このためせっかくの進化が小幅に感じられてしまう。とはいえ、6月に開催される開発者会議「WWDC」で「iPadOS」の新ヴァージョンが発表される予定なので、まもなく状況が変わる可能性はある。

だが、テストできるのは目の前にある端末だ。それに、このiPad Proが市販のタブレット端末では圧倒的な最高峰に位置することは否定のしようがない。アップルはiPadを本格的なノートPCの代替機として使えるように毎年少しずつ改良を重ねているが、2021年モデルは過去最高と言える完成度だ。

「iPad Pro」はM1チップで圧倒的な性能を手にしたが、ソフトウェアが追いついていない:製品レヴュー

とはいえ最新のiPad Proは、本格的なノートPCの域に100%達しているわけではない。それでも最新のハードウェアを備えたことで、日常的なコンピューティングのニーズを満たすには十分なレヴェルに達している。そして真の能力を解き放つ最後のひと押しとなるソフトウェアアップデートを、いまや遅しと待ち構えているかのようだ。

鮮やかな映像を楽しめるミニLEDディスプレイ

例によってiPad Proには、11インチと12.9インチのふたつのモデルが用意されている。今回の新モデルで注目に値するのは、新しいディスプレイ技術が売りの12.9インチモデルだ。アップルはこのディスプレイを「Liquid Retina XDRディスプレイ」と呼んでいるが、この記事では業界用語に準じてミニLEDと呼ぶことにする。この機種に買い換える最大の理由がディスプレイにあることは、まず間違いない。

iPad Proのディスプレイには有機EL(OLED)ではなく、相変わらず液晶が採用されている。だが、ほかの液晶タブレット端末と違うのは、液晶を明るくするために使われているバックライト技術だ。

従来のiPad Proでは、ディスプレイの背面に配置された72個のLEDで画面を照らしていたが、最新モデルではLEDの数を一気に10,000個以上に増やしている。それがミニLED技術の真髄だ。つまり、何千個もの微小なLEDでディスプレイを照らすのである。

背面に配置されるLEDの数が多いほど、画面全体のコントラストと画面の任意の領域の黒の深さを細かくコントロールできる。これはローカルディミングと呼ばれる技術だ。この技術を利用すれば、明るくする必要がある画面の領域(ゾーンと呼ばれる)と暗くする必要がある画面の領域を、より細かく調整できる。

このモデルの画面には2,596個のローカルディミングゾーンがある。もちろん、それだけ多くのミニLEDがあれば、ディスプレイ全体を従来よりずっと明るくすることもできる。

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