教科書で何が起きているのか~ドキュメンタリー映画『教育と愛国』予告編

映画『教育と愛国』 5月13日より全国順次公開(C)2022映画「教育と愛国」製作委員会

2017年に大阪・毎日放送(MBS)で放送され、その年のギャラクシー賞テレビ部門大賞、「地方の時代」映像祭では優秀賞を受賞した番組『映像‘ 17 教育と愛国~教科書でいま何が起きているのか』が、最新取材を加えて映画化。5月13日(金)より東京のシネ・リーブル池袋、アップリンク吉祥寺ほかにて公開。翌14日(土)より大阪・第七劇術劇場、ほか全国で順次公開される。本作の予告編が解禁となった。【動画】ドキュメンタリー映画『教育と愛国』予告編 番組放送後、19年に番組内容と取材ノートをまとめ書籍化 (岩波書店)。20年には座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバルで上映もされた。これだけ長く注目され続けるのは、これからの社会を考える上で、「教育と政治」の関係が気になっている人が多くいる証左ではないだろうか。 そして、MBSで20年以上にわたって教育現場を取材してきた斉加尚代ディレクターが、日々の放送で断片的に報じられる「教育問題」のニュース、あるいはまったく報じられることのなかった出来事を、さかのぼって丹念に掘り起こし、さらに追加取材と番組の再構成を敢行して映画化。語りは俳優・井浦新が担当している。 政治と教育の距離はどんどん近くなっている。軍国主義へと流れた戦前の反省から、戦後の教育は政治と常に一線を画してきたが、昨今この流れは大きく変わりつつある。 2006年に第一次安倍政権下で教育基本法が改正され、「愛国心」が戦後初めて盛り込まれた。以降「教育改革」「教育再生」の名のもとに、目に見えない力を増していく教科書検定制度。 「日本軍」慰安婦や沖縄戦を記述する教科書を採択した学校に押し寄せる大量の抗議ハガキ。政治介入ともいえる状況の中で繰り広げられる出版社と執筆者の攻防はいま現在も続く。 歴史の記述をきっかけに倒産に追い込まれた大手教科書出版社の元編集者や、保守系の政治家が薦める教科書の執筆者などへのインタビュー、新しく採用が始まった教科書を使う学校や、慰安婦問題など加害の歴史を教える教師や研究する大学教授へのバッシング、さらには日本学術会議任命拒否問題など。 斉加ディレクターは、「<世界の平和に貢献するという理想の実現は、教育の力にまつべきものである>(要約)と旧教育基本法は謳った。しかし 2000年代以降、教科書の記述が政治の力で変えられていく。消されてゆく戦争加害の記述。教科書は誰のためにあるのか。本作の大きなテーマである」と、寄稿。 「私たちは時代の曲がり角を曲がったのか。民を踏みにじる政治が、まかり通るのはなぜなのか。権力や強者に擦り寄る空気はメディア内部にも漂っている。在阪テレビは維新の政治家との距離が近すぎると問題視されていてMBSも例外ではない。教育に対する政治の急接近に危険性を感じ、切羽詰まる思いで映画を作った。本作にカタルシスも正解もない。あるのは、語り出してほしいという願いだけだ」と訴えている。

 教科書で何が起きているのか~ドキュメンタリー映画『教育と愛国』予告編

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