年間40万件を即日対応するパナソニックのフィールドエンジニアリングとは?
パナソニック システムソリューションズ ジャパン(PSSJ)は7月27日、オンラインによる記者会見を開き、現場プロセスのイノベーションを支えるフィールドエンジニアリング(施工・設置・保守・運用サービス)の国内の取り組みについて説明を行った。
パナソニックでは2018年より、注力事業として「現場プロセスイノベーション」を推進しており、サプライチェーンマネジメント(SCM)分野に注力している。2021年4月23日には、サプライチェーン・ソフトウェア大手の米Blue Yonder(ブルーヨンダー)を71億ドル(約8000億円)で買収した。
同事業では、パナソニックの製造業100年のノウハウやインダストリアルエンジニアリング(IE)、現場のデータを取得する各種エッジデバイスや画像センシングといった技術と、ブルーヨンダーのAIを活用したソフトウェアプラットフォームを組み合わせ、需要・供給の変化をリアルタイムに把握し、現場作業の最適化や省人化を図る「オートノマスサプライチェーン(自律的な現場)」の実現を目指している。
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SaaS・ソフトウェアやテクノロジーソリューション、エッジデバイスなどももちろん重要だが、無形リソースである施工や設置、保守、運用サービスなどのフィールドエンジニアリングも現場の効率化を図るうえで欠かせない。
PSSJのエンジニアリング本部は、全国に70拠点設されしており、サービススタッフは約1600名在籍している。コールセンターによる受付は24時間365日対応、プランニングからコンストラクション、メンテナンス、オペレーションを一気通貫で行い現場を支援する。
同社によると、エンジニアリングの年間受付対応数は約40万件で、年間稼働件数は約16万件、対応品番数は約2万3000品番ありパナソニック製品以外も対応できるとしている。障害受付窓口である北海道札幌のコールセンターでは応答率が90%を超え、製品の相談窓口である東京都品川の「システムお客様ご相談センター」の1次解決率は92%だ。
具体的な事例として、郵便局へのエンジニアリング対応が紹介された。同社は全国2万4000カ所の郵便局のサポートを行っており、設置されている端末機や防犯カメラにトラブルが発生した場合、連絡の受付後、手配から駆け付け対応まで即日で対応している。
また、同社は国内すべての法人向けPC「レッツノート」の修理にも対応している。オンサイト保守の場合、原則翌々営業日に訪問しその場で障害の対応を行っている。引き取り保守の場合でも到着後原則24時間以内に修理を完了させるという。年間対応可能数は合計5万台で、スピード感、ボリューム感ともに過不足ないと感じられる。「日経コンピュータ顧客満足度調査2020‐2021」によると、ノートPC部門で、顧客満足度1位を獲得しており、評価項目の 「サポート」においてもトップの評価を得ているという。
これらの実績を上げている理由として、対応スタッフへの教育制度に注力している点が挙げられる。社内に常設している過去の事例を共有する施設「経営品質啓発センター」では、対応スタッフが顧客の声や作業・設計品質などを繰り返し学んでいる。また国家・ベンダー資格の助成制度もあり、独自プログラムの学習支援試験対策で、業務に必要な国家資格以外のIT系資格の取得を促進している。さらに、メーカー系のエンジニアとして社内独自の認定制度も設けており、サービス提供に必要な製品の知識を身につけているという。
「フィールドエンジニアリングのミッションは、顧客の現場と開発・製造・販売をつなぐことだ」と、PSSJ 取締役専務執行役員 エンジニアリング本部 本部長の藤井克敏氏は説明した。
一般的なメーカーでは、開発・製造・販売とは別にエンジニアリング会社を運営していることが多く、現場の顧客の声が開発部門に届きづらいといった課題がある。一方パナソニックでは、開発からエンジニアリングまでを1つの会社で提供しているため、現場の声や現場で気づいた課題を社内にフィードバックすることで、顧客の業務プロセスに適したソリューションづくりに生かせるとしている。
同社は今後も、フィールドエンジニアリング事業において顧客と継続的な信頼関係を構築し、リカーリングビジネスを創出していく方針だ。