オミクロン株は皮膚や物質表面でかなり長生きする 最新の研究結果から

新型コロナウイルスは、飛沫感染やエアロゾル感染だけでなく、接触感染でも広がります。

プラスチックなどの物質表面や皮膚表面において、ウイルスがどのくらい生存するのか、また変異ウイルスにおける違いが分かってきました。今日はそんな研究結果について書いてみたいと思います。

物質表面でどのくらい生存するか

実はすでに、プラスチックやステンレスでは新型コロナウイルスは3日間くらい生存することが分かっています(1)。

ツルツルした表面を触ると感染リスクが高そうだということは、私たちも何となくイメージできるところです。コロナ禍以降、電車の吊り革をあまり持たないようにしている人も多いと思います。

感染を成立させるほどウイルスが生存するかどうか断言できませんが、サージカルマスクにおいても、最大で1週間程度ウイルスが生存するという報告もあります(2)。

変異ウイルスは皮膚表面で長く生存する

京都府立医科大学から、皮膚表面において、新型コロナウイルス(従来株)は約9時間ほど生存することが報告されています(3)。

そして、同じ研究グループから、続けて興味深い研究結果が発表されました(4)。従来株だけでなく、変異ウイルスごとに生存時間を調べ、また、アルコール消毒の効果についても検討したのです。

新型コロナウイルスのプラスチック表面における生存時間は、従来株56.0時間、デルタ株114.0時間、オミクロン株193.5時間という結果でした(図1)。変異ウイルスに移り変わってから、かなり長くなっている印象です。

 オミクロン株は皮膚や物質表面でかなり長生きする 最新の研究結果から

また、ヒトの皮膚表面では、従来株8.6時間、デルタ株16.8時間、オミクロン株21.1時間でした(図2)。これも変異ウイルスで長くなっています。

ただし、ウイルスが生存しているとはいえ、それがヒトに感染を成立させるほどの量かどうかはよく分かっていません。温度や湿度が違えば生存率も変化しますし、実験と実生活は決して同一というわけではありません。

さて、アルコール消毒に関しては、32.5%濃度のエタノールでは15秒で従来株が不活化されましたが、デルタ株では35%濃度、オミクロン株では40%濃度が必要という結果でした。つまり、変異ウイルスは比較的アルコールにも強いことが示されました。

現在、新型コロナウイルスに対するアルコール消毒について、エタノール濃度は70%以上95%以下、可能であれば60%以上が推奨されています(5)。となると、変異ウイルスであっても、通常濃度のアルコール消毒をしっかりすれば、十分不活化が可能ということです。これは少し安心できる結果ですね。

まとめ

従来株と比較して、オミクロン株などの変異ウイルスでは、プラスチック表面や皮膚表面に長時間生存しやすいことが分かりました。ただヒトに感染を成立させるほどの量かどうかは不明です。

まとめるとのようになります。まだデータはありませんが、プラスチックや皮膚以外の表面においても、変異ウイルスは従来株より長時間生存する可能性が高そうです。

コロナ禍においては、電車のつり革、手すり、ドアノブ、エレベーターのボタン、共用パソコンのキーボードなどウイルスが長時間生存しているようなところを極力触らないよう注意しましょう。

たとえ「抗ウイルス仕様・抗菌仕様」などの表示があっても、表面についた新型コロナウイルスが死滅するわけではありません。

そういった場所を触った場合、できるだけ手洗いやアルコール消毒をするよう心がけましょう。

(参考資料)

(1) Chin A, et al. Lancet Microbe. 2020 May;1(1):e10.

(2) van Doremalen N, et al. N Engl J Med. 2020 Apr 16;382(16):1564-1567.

(3) Hirose R, et al. Clin Infect Dis. 2021; 73(11): e4329–e4335.

(4) Hirose R, et al. bioRxiv. DOI: 10.1101/2022.01.18.476607(査読前論文)

(5) 国立感染症研究所, 国立国際医療研究センター 国際感染症センター. 新型コロナウイルス感染症に対する感染管理. (URL:https://www.niid.go.jp/niid/images/epi/corona/covid19-01-210806.pdf)

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