チャリティー写真展「日本とフランス、共に明日に向かって」がTokyo Photo 2011で開催

Tokyo Photo委員会は9日、23日から開催する写真イベント「Tokyo Photo 2011」内で実施するチャリティー写真展「日本とフランス、共に明日に向かって」の発表会を在日フランス大使館で行なった。会場では、参加写真家の1人である篠山紀信氏も出席した。

Tokyo Photoは、フランスで開催されている国際写真見本市「PARIS PHOTO」をモデルにしたアジア最大級の写真見本市。2011年で3回目を迎える。

今回その中で、東日本大震災のチャリティー写真展「日本とフランス、共に明日に向かって」を開催することが決定した。在日フランス大使館が主催するもので、日仏合わせて8名の写真家が被災地で撮影した写真を展示および販売する。販売作品の売上のうち半分を在日フランス大使館を通じて寄付する。また、会場には募金箱も設置し、来場者からの寄付を募る。

日本とフランス、共に明日に向かっての参加写真家は日本が川内倫子氏、篠山紀信氏、田原桂一氏、長野陽一氏。フランスはエリック・レヒシュタイナー氏、ジェレミ・ステラ氏、ジャン=リュック・ヴィルムート氏、フィリップ・シャンセル氏。

5月1日に初めて被災地を訪れたという篠山紀信氏は、「初めて見たときには、言葉がなかった。何もないがれきの山で、打ちのめされるくらいの光景だった」と現場の印象を語った。

篠山紀信氏

「報道写真とは違う自分なりの表現をしたかった」という篠山氏だが、現地にはどう撮影するかは何も考えずに向かったとのこと。「東京の机の上でどう撮ろうか考えて行く、というのは違うと思った。現場で感じたことを表現しなければならないと考えた」(篠山氏)。

チャリティー写真展「日本とフランス、共に明日に向かって」がTokyo Photo 2011で開催

到着した当初はいろいろな光景がありどう撮ればいいのかわからなかったというが、そのうちに海岸にあった松が横に津波で倒された風景があった。篠山氏は「水が静かにひたひたとあった。この水が、こんな恐ろしいことをするのかと思った。だがこれは自然を自然が破壊して、新しい自然を作ったのではないかと思うようになった。恐れおののくが、畏敬の念を持って見るものではないかと気がついた。そうしたらものが見えてきた」と語る。今回の作品も「畏怖の念を持って写した」(篠山氏)という。

持ち込んだのは大判カメラの8×10。「被災者の前では、ただ『カメラを見てください』と言って撮影した。助かった人と亡くなった人がいる中で、生と死を如実に感じた。理不尽というか不条理というか……それが被災者の顔に表れていた。8×10は、写真家の力を超えて被写体からはぎ取る力がある」(篠山氏)。

篠山氏の作品の一部。発表会の出席者にプリントを配布した11月半ばに発表するという篠山氏の写真集「ATOKATA」に今回の作品も収録する

「3.11というあの日から、表現者というのはいろんな考え方が全く変ってしまったと思う」という篠山氏だが、自らにも変化があったという。「もの(作品)を作るのには何でもありなんだなと思った。船が陸にあったり、家が捻れていたりと現代美術の作品のようなものがそこら中にあった。人が作っていくもの(作品)には限界があるし、それをもっと超えたものができるのでは無いかと思った」(篠山氏)。

また、今回はプリントにも変化が現れている。篠山氏は普段のプリントを写真集も含めて基本的に裁ち落とし(縁なし)で制作しているという。これは写真が外の世界と繋がっている、という表現のためだ。だが、今回のプリントには白のフチを設けた。「僕の見たものを閉じこめて作品にした。その辺だけでもだいぶ違う。僕の中で変ったことは、深く大きくある」(篠山氏)。

写真を見ながら解説する篠山氏

篠山氏は10日ほど前にも被災地を訪れたという。「夏だと雑草が出てくる。緑のエネルギーがあった。ものの哀れのような感じが無くなっており、日一日と変っていくんだなと思った。今後も、もっと時間をおいて何度か被災地に行くと思う」(篠山氏)と話した。

・篠山氏以外の出展作品の一例

挨拶した在日フランス大使館 文化アタッシェのエレーヌ・ケルマシュター氏は、「東日本大震災の被災者に連帯を示すイベントをフランスでも行なっており、Tokyo Photoに関わるのもそうした取り組みの1つ」とした。今回の展示は在日フランス大使のアイデアだという。篠山氏の作品に対しては、「感動した。風景は絵画か墨絵のような印象を受けた。ポートレートも心に直接訴えかける作品だった」との感想を述べた。また、こうした作品をフランスでも展示したいとの希望も話した。

在日フランス大使館 文化アタッシェのエレーヌ・ケルマシュター氏発表会は在日フランス大使館で開催された

Tokyo Photo代表の原田知大氏は、「Tokyo Photo 2010は4日間で1万人弱の来場があった。国内でも大きな関心がることがわかった。東日本大震災の影響で3回目の開催は難しいと思っていたが、テート・モダン(イギリスの国立近現代美術館)の協力もあって実現に漕ぎ着けた。(Tokyo Photo全体では)新しいギャラリーの展示もあり前回よりおもしろくなると考えている」とした。

Tokyo Photo代表の原田知大氏Tokyo Photoに出展するギャラリー

Tokyo Photoでは、20のギャラリーが出展する。東松照明氏、奈良原一高氏、森山大道氏らの作品も出展されるという。テート・モダンのキュレーションによる写真家クリス・ショウの写真展や、リコーフォトギャラリーRING CUBEによる写真展「記憶の桜」、ブルガリ特別展も合わせて開催する。

・Tokyo Photoに出展する作品の一例

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