電通報 ビジネスにもっとアイデアを。 ネット動画を見るデバイスは家庭のテレビ受像機にまで広がるのか?
今回の調査ではテレビ受像機所有者の約4分の1(23.8%)がネットに接続したテレビを利用していることが分かりました。現状ではテレビ受像機をネットに接続している人はまだ少数派といえそうです。
なお、テレビ受像機でネット動画を視聴している人を対象に、どの機器をネットに接続しているか聞いたところ、テレビ受像機本体を直接ネットに接続する人が最も多く(69.0%)、次いで録画機(28.6%)、ゲーム機(26.2%)、外付けチューナー(22.8%)と別機器を介したネット接続が行われています(複数回答)。
さらに、ネット接続されたテレビ受像機で実際にネット動画を視聴する人はテレビ受像機所有者の11.7%でした。さまざまな動画配信サービスの本格参入が相次いでいる現時点では、この数値自体の大小を論じるよりは、ネット接続したテレビ受像機を所有する人において、ネット動画サービスを利用する人が半分にとどまっている点に注目すべきと思います。
ネット動画サービスそのものの魅力や利便性の向上がテレビ受像機でのネット動画視聴を増やす方向に直接的に働くことは容易に想像できます。しかしテレビ受像機におけるネット動画視聴の受容性を考える際には、スマートフォンやパソコンなどのデジタル機器の利用状況や放送コンテンツ・DVDなどのパッケージ映像への関与の度合いなど、さまざまな外部要因が複雑に作用する点も見逃せません。伸びしろが大きいように見えるテレビ受像機でのネット動画視聴ですが、この視聴スタイルの将来的な広がりに関する見通しを得るためには、多様な視点に立脚した考察が必要となります。
テレビを介してどんなネット動画を見ているの?
テレビ受像機ではどのようなネット動画が視聴されているのでしょうか。今回の調査では共有系動画サービスが最も多く、テレビ受像機所有者に占める比率は6.9%でした。サービスの多くが無料であることが影響していると考えられます。共有系動画サービスにおいては音楽やアニメがテレビ受像機でよく視聴されるコンテンツジャンルの代表例です。
次いで、有料動画配信サービスが続きます。その利用者がテレビ受像機所有者に占める比率は5.9%で、映画、ドラマ、アニメなどが多く視聴されています。
なお、有料動画配信サービスには定額制動画配信サービスと都度課金制動画配信サービスが含まれますが、その利用率はテレビ受像機所有者のそれぞれ4.9%と1.8%でした。
無料動画配信サービスの利用者はテレビ受像機所有者の3.1%を占めています。よく視聴されるコンテンツジャンルはアニメ、映画、音楽などでした。
今回の調査では2つ以上のネット動画サービス類型の重複利用の実態も明らかになりました。詳細に見ると、有料動画配信サービス利用者の重複利用率は約36%と最も低く、自身が契約しているサービスをテレビ受像機において集中的に利用している様子がうかがえます。その一方で、ごく少数ながらも有料動画配信サービス、無料動画配信サービス、共有系動画サービスの全てを利用している人の存在も確認できます。
複数のデバイスを介して一つの動画を見る新しい視聴スタイル
ネット動画の利点の一つは特定のデバイスに視聴が限定されない点です。特に有料動画配信サービスにおいては、例えば移動中にドラマをスマートフォンで途中まで視聴し、自宅に戻ったら続きをテレビ受像機で見られることをサービスの魅力としてアピールしていることが多いようです。
本調査では有料動画配信サービス(定額制動画配信サービスもしくは都度課金制動画配信サービス)をデバイス横断的に利用できる環境にある人、すなわちテレビ受像機に加えて、スマートフォン、タブレット、パソコンのいずれかでも有料動画配信サービスを利用するという人を対象に、テレビ受像機で見ていた動画の続きを他のデジタル機器で見ることがあるか、また逆に他のデジタル機器で見ていた動画の続きをテレビ受像機で見ることがあるかを聞いてみました。