Engadget Logo エンガジェット日本版 「Oculus Quest 2」の世界から戻れなくなった、ボクシング・釣り・ゴルフがあるから

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以降では2021年05月6日に公開された本田雅一さんによるレビューを再びお届けします。

「本田さん、なんで今さらOculus Quest 2にはまってるの?」

矢崎編集長の何気ない声がけにはたと気付いた。

確かにいつの間にか中年から壮年に。コンピュータゲームの現場取材も主にテクノロジを追いかけるばかりで、その中のコンテンツについては楽しむ気分じゃなかったのに、今回はむしろ"自分から前のめり"で遊んでいる。

Oculus Quest 2 (Amazon.co.jp)

最新ゲーム機にも、最新ゲーミングPCでの美麗グラフィックスにも、大好きだったドライブシミュレーターの最新装備とソフトウェアにも、あまり反応を示さなくなっていた俺が、なぜかOculus Quest 2を買ってからひと月ほどで10タイトルを超えるゲームを購入している。

しかし理由は単純。楽しいからだ。

VRゲームが作り出す仮想空間へと没入する感覚も楽しいが、何よりネットワークで友人、あるいはゲーム世界で知り合った仲間と同じ時間と場を共有しながら、軽口を言い合い、ただ過ごしているだけで時間が経過する。

とはいえ、このゴールデンウィークを越えるまでは積極的に他人に勧めるまではいなかった。

こちらも理由は単純。VRの魅力は体験しなければ理解しにくいからだ。

軽量化が進み、ゲーミングPCやゲーム機などと接続しなくとも楽しめるスタンドアローン型とはいえ、時間装着していると不快感を感じたり、コンテンツによっては酔ってしまう弱点はいまだにある。

ひとたびその世界に入り込めば、そんな弱点など些細なことだと思うのだが、かといってVR体験ゼロの友人、とりわけ非テック系やゲーム好きの友人以外に勧める手段を思いつかなかったからだ。

しかし、それにもかかわらず、このゴールデンウィーク少し前から状況が変化し、筆者の身の回りにはOculus Quest 2ユーザーが着実に増えてきた。しかも男女問わず、年齢層も幅広く、ファッションやフィットネスなどVRの世界とは縁遠いように思われたクラスタの友人まで参加してきたのだ。

自宅で"のんびり"しつつ"汗をかき"、"開放感"まで味わえる

このゴールデンウィークを自宅で過ごしていた人は多いと思う。筆者も同じだが、Oculus Quest 2を使い、知り合ったVR仲間と立てたDiscordサーバで待ち合わせしながら自宅と自宅と繋ぎ、のんびりと釣りをしながら過ごし、時折、ゴルフの打ちっぱなしに集まってニアピンゲームを楽しみ、気が向けばパターゴルフのコースを回っていた。

Oculus Quest 2を使い始めるまでは、スタンドアローンのVRデバイスなんてたかが知れていると思っていたが、誘われるがままに「Real VR Fishing」での釣りに誘われ、友人たちの横に並んで釣りを楽しむようになっていた。

川のせせらぎ、虫の声を聴きながら渓流での釣りを楽しむもよし、赤紫色に染まる夕暮れの河口にボートを並べて大物を狙うもよし、あるいは離島からボートで沖に出て海釣りに挑戦してもよし。

かなりよく魚がかかってしまうため、忙しいゲームではあるのだが、自宅にいながら他愛のない話をしつつの釣りは、開放的な風景もあって自宅にいる閉塞感を忘れさせてくれる。

これは「Topgolf with ProPutt」のパターゴルフも同じ。簡素なグラフィックスではあるが、どのコースも気持ちの良い空気感を感じさせる仮想世界で、ビーチ、砂漠、森、氷の世界などに作られたパターゴルフコースを楽しめる。

現実のコースではあり得ないような難コースもあるが、自分自身が"巨人"となってコース全体を眺めたり、コースの各所を素早くワープしながら複雑なアンジュレーションを確認したり……友人たちとの会話を楽しみながらリアルなパッティングフィールでのプレイをしていると、本物のコースにでているように楽しい。

このゲームには、ゴージャスなゴルフリゾートをイメージした打ちっぱなしのラウンジ(空間には多数の巨大スクリーンが配置されYouTube動画などで音楽PVを流す機能などもある)もあり、最大8人が集まり、こちらはパターだけではなくウェッジからドライバーまでを持ち替えながらのプレイが可能だ。

かなりおバカな遊び方もでき、大スクリーンでの音楽プレイも相まって、ほぼリゾートでのパーティ気分。こぼさないようにストロー付きのボトルにでも好きなドリンクを用意しておけば、あっという間の数時間をノリノリで楽しめるだろう。

意外にじんわりと汗ばむぐらいには運動できるのも利点だが、コロナ禍で運動不足という人にもOculus Quest 2は真面目に素晴らしい価値を提供してくれる。おすすめは「FitXR」と「Thrill The Fight」だ。

バカにできない本格フィットネスアプリ

バカにしていたというわけではないが、フィットネスにハマって体脂肪率を44%から15%まで落とした身としては、ゲーム機のフィットネスアプリは「まぁ、まぁそんなものだよね」的なライトなイメージがあった。しかし、FitXRはなかなか本格的だ。

もちろん「FitXR」も間口は広く、初心者でも手軽に始められるが、上級向けコンテンツになれば、かなり体を動かし慣れた人でもたっぷりの汗をかけるだけの運動量が稼げる。

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エンガジェット日本版 「Oculus Quest 2」の世界から戻れなくなった、ボクシング・釣り・ゴルフがあるから

プログラムは主にボクシング風フィットネス(いわゆるアディダスボクシング的なもの)を、リズムゲーム「BeatSaver」ライクに飛来してくる物体にパンチしつつ障害物を避けるBOXと、エアロビ系ダンスを楽しむDANCEに分かれている。

特にDANCEの動きはなかなか激しくクイックな動きが求められ、本気でインストラクターの動きを追いかけているとかなりキツイ。自分の動きやパンチのスピード、タイミングなどをスコア化してくれ、グループでのマルチプレイもできるのでスコアを競うこともできるなど、単にこなせば良いだけではない奥の深さもある。

本物のフィットネスダンスクラスだと、心拍上げに10分、筋トレ系10分、燃焼系20分、チルアウトに10分といったプログラムもあるが、そこまで長時間のプログラムは今のところ見つけていない。

あまり長時間のフィットネスプログラムだと、汗でゴーグルのフェイスプレートが濡れてしまう問題や、レンズが曇ってしまう問題が出てきてしまうが、なかなかどうして、このFitXR、やり込んでみるほどに可能性を感じさせてくれる。

今後はHIIT(高強度インターバルトレーニング)への対応などアップデートも予定されており、サブスクリプション契約(9.99ドル)ユーザーには頻繁にコンテンツの更新も提供されている。

残念なのは表示こそ日本語に対応しているものの、インストラクターの音声は英語のみということだろうか。ルールはシンプルで簡素な英語だが、やや複雑なダンスの音声指示には慣れが必要かもしれない。

そしてさらに感心したのがボクシングゲームの「Thrill The Fight」だ。価格が1000円を切っているため手軽に始められるのもいい。

基本的には2メートル角のエリアで楽しむため、フットワークをあまり多く使いこなせるわけではないが、ダッキングで相手のパンチをかわしてストレートを打ち込んだり、ジャブで相手のガード位置を引き付けておいてから右ロングフック、ウィービングで体揺らしながら相手の懐にステップインしてワンツーだったり、相手のパンチをヘッドスリップでかわしつつ、踏み込んでボディブローだったりと、普通にスパーリングなどで使うテクニックがゲーム上できちんと活用できる。

敵の防御がやや単調ではあるものの、こちらも楽しみながら汗をかけるうえ、何よりも"痛くない"ので打撃系格闘技に興味がある人なら大いに楽しめるだろう。

"VRは俺向きじゃない"という考えを一度リセットしてみる

ということで、このゴールデンウィークは自宅にいながら、釣りやゴルフを友人たちと楽しみ、フィットネスで汗をかき、ボクシングで仮想敵を倒しまくり、あっという間に最終日を迎えた。

8ビットパソコンやファミコンの時代からコンピュータゲームに親しんできた身としては、癒しや開放感、爽快さや身体を動かす楽しみなどとコンピュータゲームの世界は正反対だと感じてきたのだが、そのいずれの要素もOculus Quest 2は持っている。

30代初頭には某海外系MMO RPGでギルドマスターとしてレイドを指揮するなどオンラインゲーム廃人となってしまい、アウトドアに出る機会が減ってブクブクと太り続け、書籍の執筆企画を2冊ほどすっ飛ばしてしまった経験のある筆者が言っても説得力はないかもしれないが、スタンドアローン型VRデバイスには従来のゲーム機にはない体験と可能性が感じられるはずだ。

今さら入手難のコンソールゲーム機を無理に入手しようとは思わない程度までゲームの世界への温度が下がってる筆者の目線でも熱くなれる。そこまで洗練されるには時間が必要だろうと予想していたが、想像していた以上に体験の質は高まっていたのだ。

友人や知人でOculus Quest 2を持っている人がいるなら、是非とも借りて一度プレイしてみて欲しいが、運動不足や外出できないことにストレスを抱えている大人なら、3万円台前半のシステムなので買ってしまう方が手っ取り早い。

筆者のVR原体験はソニーのPlayStation VR試作機だった(まだプロジェクトモーフィアスと言われていたころ)が、その後に発売されたPlayStation VRはコントローラなどもMOVEを用いた簡素なもので、歩行モードも備えていなかった。結果、体験が現実とのリンクを感じられず、可能性は感じたもののすぐに使わなくなってしまい、その後を追いかけていなかった。しかし、そんな失望も早いところリセットしておけばよかったと後悔しているぐらいだ。

もしOculus Quest 2を気に入ったなら

そしてもしOculus Quest 2を気に入ったなら、いくつかのオプション製品を追加購入することを勧める。

ひとつはQuest 2フィットパック。純正フェイスプレートはコーカソイドの骨格向けに作られているようで、とりわけ"平たい顔族"なモンゴロイドには合わない。

このオプションを持っている友人に試させてもらったところ、見事に平たい顔族の筆者でもフィット感が良くなった。個人差はあると思うが、遮光性を上げるプロッカーも同梱されるので、フィット感を向上させたいならおすすめだ。

Quest 2フィットパック (Amazon.co.jp)

そしてほぼ必須と思うのがQuest 2 Eliteストラップ。できればバッテリーと携帯ケース付きを揃えたい。バッテリーはストラップ内に内蔵されており、Oculus Quest 2の弱点でもあるバッテリー駆動時間を2倍に伸ばすことができる。

Quest 2 Eliteストラップはプラスティックのストラップで、位置決めすると緩まず、激しい動きでもゴーグル位置がズレにくくなる。標準のゴムストラップはズレを抑えるために強く締めると頭が痛くなりがちなのでなおさら。

Quest 2 Eliteストラップ (Amazon.co.jp)

いずれも内容からすると少々高価だが、その価値はあると感じられるものだ。

Oculus Quest 2はユーザーが多いため、サードパーティ製グッズも豊富。今のところ互換品で素晴らしいと思える製品にはまだ出会えていないが、選択肢は多いのでより安価な互換品を探してもいいかもしれない。

Oculus Quest 2 (Amazon.co.jp)

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