ビジネスPC「MousePro」が10周年、半導体不足にコロナ禍 大変革期の処方箋を訊く | マイナビニュース マイナビニュース マイナビ
マウスコンピューター 代表取締役社長の小松永門氏
そもそも、MouseProが立ち上がった2011年というのはどんな年であっただろうか。まず思い出すのはあの3.11の東日本大震災だろう。Appleのスティーブ・ジョブズが死去した年でもある。Windows XP(2001年リリース)とWindows 7(2009年リリース)のOSシェアがようやく逆転しそうになっていたのもこの頃かと思う。どうあれ、激動の時期であったことは間違いない。
-- MousePro、2021年2月で10周年を迎えることになりました。まず、この10年を振り返って率直な感想は?
小松: 振り返ると、法人向けのビジネスが全体的に伸びていった時期だったといのは大きかった。それと、MouseProをはじめるまでの「マウスコンピューター」は、WEBで購入する個人向けのパソコンのメーカーというイメージが強かった。ここにビジネス向けのパソコンブランド「MousePro」の立ち上げることで、「法人のお客様の要望にきちんと向き合っていく」というメッセージを示せたのは大きかったですね。
小松: 社内に目を向けても、MouseProの存在が「うちは法人向けもちゃんとやるんだ」という意識に繋がった面があり、これがとてもよかった。法人向けをやるというのは、品質・サポートを重視するというのとイコールなので、MouseProは単なる製品ブランドを超えて、品質・サポート強化の動きを意識として社内全体に浸透させるのに役立った面がありました。
-- 確かに、MouseProの10年は、マウスコンピューター全体で、具体的には故障率の減少であったり、品質面がとても重要視された時期に重なるように思います。
-- ところで、MouseProは急成長でした。この10年は平坦な市場環境ではなかったかと思いますが、ここまでの成長の中で、最も力を入れたことは何だったのでしょう。成長の要因として、最も顧客から支持されたことは何だとお考えですか?
小松: やはり「品質」です。
小松: 法人向けは、品質がついてこないと、リピートに繋がってこない。品質には一番力を入れて取り組みましたし、ありがたいことに、お客様からの支持も得ることができました。
小松: 次いで「納期」を安定させることには苦心しています。実際に、見積りであったり、営業の商談の差し替えは極力減らすことができています。もちろん、急激な需要変動などで対処しきれなかったという問題はいくつかあって、課題が残りましたが。ただそういった取り組みで、取引先、販売店の裾野がひろがる結果にもつながって、MouseProの成長の要因になりました。
-- 品質と納期ですね。短納期はMouseProに限らず、国内製造・出荷とあわせてマウス製PC全体の特徴だと思います。そうなると足元、この短納期に逆風が吹いています。コロナ禍での生産の問題はもちろんですが、世界的な半導体不足も深刻になってきました。MouseProではこの逆風にどのように立ち向かっているのでしょう。現状や、今後の見通しがあれば教えて欲しいです。
金子: 2020年内は、予測に基づく範囲で安定供給を継続できていましたが、年明け後他社製品を検討されていたお客様からの差替え、振替ご依頼を想定以上にいただき欠品や遅延を一部製品で発生させてしまっているのが現状もあります。
-- この逆風下で、耐性があった要因は何ですか? どこもモノが無くて苦労しているなか、どうやったんですか?
小松: 受注の調整はとても細かくやっています。あとはマウスコンピューターの場合、MouseProで足りない部材をmouseブランドの在庫から融通するとか、ブランド間で融通し合うことで需要に対応することもできた。あとは、振り返ってみると、先を読んで営業が需要をしっかり予測できていた。
金子: 特に半導体の需要予測ですね。業界動向を入念に追い続けていました。今年度は前の年に続き、半導体が足りなくなる可能性が高いことはある程度予想していました。なので、新しいものにすぐに飛びつくだけでなく、確実に数量を確保できる前世代の半導体をしっかり確保して置いたりと、先を読んで調整していました。これは結果として見通しがうまくはまった。そしてサプライヤーとの協力関係です。
小松: 入手できたものはしっかりと売っていくことができました。
10歳のMouseProは、2021年の変化にどう立ち向かう
-- 10年前と今では、市場の状況がだいぶ変わったはずです。MouseProを立ち上げた当初のコンセプトがあったかと思いますが、現在にいたるまでにコンセプトに何か変化はあったのでしょうか。また、市場の変化で興味深い、注目していることはありますか?
小松: ブランドのコンセプトは基本的には立ち上げ当初の通り。当初に比べ製品のラインナップは増え、ニーズにあわせた製品展開もしてきていますが、MouseProでは、基本的に「品質」や法人お客様のニーズである「納期」や「製品の安定供給」に向き合うことを、ブレずにやってきたと思っています。
金子: 10年前の法人向けPC市場を振り返ってみると、やはり世界規模でビジネスされる各メーカのボリュームスケール、マーケティングや営業戦略は圧倒的でした。当時の法人向けPCといえばより安価な「Celeron」マシンが主流でしたよね。そこでMouseProでは、少しニッチですが、「高性能を手ごろの価格で」購入されたいというコアな使い方をしたいお客様へBTOメーカーであるという強みを生かして、最適な製品をお届けしてきました。
-- 日本の会社支給PCの性能(笑) こんなCPUじゃWindows 7が動かないよ! メモリが全然足らないよ! とか(笑) ……これは当時の世の会社員の皆さんが大いに共感してくれるんじゃないですかね。
金子: 今、コロナ渦でオンライン会議やWEBアプリケーションの普及が進みテレワークで働いている方もかなり増えてきました。そこで、一般的なビジネス用途で購入されるお客様の要求スペックが上がってきていると感じます(Core i5以上、メモリ16GBなど)。パソコンを選ぶときに、単純に価格だけでなく、パソコンのスペック性能の高いものを選ばれる傾向になってきていると感じています。高性能を手頃な価格で、というMouseProの当初のコンセプトがより活きてくる。
-- 今、テレワーク需要はどのくらい旺盛なのでしょう。そもそも日本はデジタル化・IT化、最近の言葉だとDX全般で課題が多かった。日本人のDXオンチの傾向はまだ根強いと感じますし、また満員電車に逆戻りだろうと期待していない人は多い。そこでPCメーカーという立ち位置から見て、顧客の状況であったり蓄積もあると思います。この日本で、例えばテレワークなど、テックを駆使した効率的な働き方が定着する気配なんかを感じることはできますか?
金子: テレワークの導入は、都市部を中心に定着化しつつあるとみています。マウスコンピューターのPC販売では、この1年でデスクトップとノートが逆転したんです。これの何が凄いかと言うと、もともとうちは7:3でデスクトップの方が売れていたんです。PC販売全体が前年比130%とか伸びている中で逆転して、しかもWebカメラ付きノートの引き合いがかなり強く、まさにテレワーク需要。
金子: またディストリビューター(販売代理店)の話を聞いていても、特に都市部でのDXが着実に進行している。足で稼ぐといったスタイルの顧客も非常に多いので、これから移行するだろうという人も多いのですが、学校系や行政でもICT・デジタル化へのシフトがまだ続いていますし、相当根強く定着していくのではないでしょうか。
金子: さらに言うと、コロナ禍の初期は、値段(の安さ)やコンパクトさを重視してノートPCを選ぶお客さんが多かったのですが、その傾向も変わってきた。大きめの画面がいいとか、RJ端子(有線LAN)付きが欲しいとか、実務効率重視になってきた。CPUはCore i5以上だとか、あとはGPU搭載モデルのノートも売れるようになってきて、どうもモノづくり系の現場もテレワークシフトが始まっています。
-- まずは緊急事態で、とにかくテレワークに間に合わせるための機材を買っていた時期から、今では本格的にテレワーク・リモートワークで成果を出すための機材に変わってきている状況が見えるわけですね。
金子: ええ。お客様も本腰を入れてテレワークに取り組んでいると感じています。
-- これ、興味本位なんですが、マウスコンピューターの社内のテレワーク・リモートワークはどういった状況なんですか?
小松: 東京本社で言うと、経理・総務・人事といった管理部隊は出社率が高めですが、それ以外の部署(営業部、購買部、営業事務、制作系の部署など)は90%の人員がテレワークに移行していますね。
-- 90%はさすがお膝元といった数字ですね。うらやましい(笑)。
小松: この状況で何を優先するのかというのはよく考えました。今のとこと、働くスタッフの安全を最優先にしている。社員からも好評……だよね?
同席したマウス広報担当者: はい(笑)。会社がデバイスの支給をかなりしっかりしてくれたので、仕事環境はすごく恵まれていると思っています。
同席したマウス広報担当者: ただ、集中して仕事をする効率は以前より上がったと思うのですが、慣れが足りないのか、いくつか課題もあって。出社していたときは、チームでお互いのニュアンスをくみ取って進める仕事が結構あったのだなと、改めて認識しました。コミュニケーションの課題は乗り越える必要がありますね。
小松: 課題はまだまだ。効率は上がる部分と下がる部分があって、会議の効率はかなり上がる。セキュリティを確保する問題ですね。セキュリティをきちんとやる分、ボトルネックができて効率が下がる部分も出ていた。
小松: あとは個人それぞれの環境なので、どうしても整えきれない仕事環境が出てくるのも課題。自宅に仕事のできる場所がないとか、個人の生活環境による部分もあるので、今の状況をずっと続けるならば、環境構築にさらに新しい備えが必要になってくる。
小松: あとはコミュニケーション関係だと、雑談の大切さだとか、人恋しさだとか、なかなか難しい問題もある。特に新人が入ってきたときは大変。
金子: 仕事を「教える」というのがとにかく大変。リモートでの新人教育は課題山積という状況ですね。
20歳に向けて動き出したMouseProの新しいチャレンジ
-- 先ほどの、テレワークのニーズの中でも、1年のうちに製品に求められるスペックが大きく変化しているというのは興味深いお話でした。逆に、MouseProのラインナップのうち、メーカー側で注目している製品はありますか?
金子: 全般ではCore i5以上のCPUを載せた製品を推しています。性能は大切。中でもノートPCで、作業性のよい14型サイズで、しかも1キロちょっとで軽量、丸1日以上持つロングバッテリーが特徴の「MousePro NB4」シリーズは見て欲しい。
金子: これ、MIL規格(MIL-STD-810G)の信頼性テストも通っているほど頑丈なので、止まるとまずいビジネスPCとしてもすごく良いのですが、派生して、キャンパス向けPCとしてもイチオシです。
-- NB4は確かにいいですね。僕も仕事で使ってみたことがありますが、万能、という感じでした。確かにキャンパス向けにも良さそうです。キャンパスと言えば、ところで文教向けはMouseProの範疇なのでしょうか?
金子: これまで、文教向けでは、弊社のクリエイターPCブランド「DAIV」や、実はゲーミングPCブランド「G-Tune」の製品で、昔から引き合いをいただいていました。そこにMouseProが立ち上がったことで、MouseProへの問い合わせや購入が増えてきているという状況です。特に今はGIGAスクール構想もあって需要が旺盛ですね。
-- GIGAスクール関連では、Chromebookの勢いが凄いですね。表に出せる数字なのかわからないので具体的には伏せますが、内々で入ってくる最近の納入状況などを見ると、Windowsが結構危ないんじゃないかくらいの盛り上がりになっている。マウスコンピューターは、Chromebookはやらないのですか?
小松: 難しい質問ですね(笑)。まあ一般論として、Chromebookには強みがあります。特に小中学校のGIGAスクールを考えた時、管理導入のしやすさや、ソフトとハード両面のコストメリットは明確な強み。当然、様々な側面で検討は行っている、とだけ。これで許してください(笑)。
-- ありがとうございます(笑)
-- せっかくなのでMouseProから脱線ついでに。まずはメインラインの「mouse」があって、法人向けの「MousePro」、近年注目のゲーミングに「G-Tune」、クリエイターには「DAIV」と揃いました。この先の可能性として、ここに追加できるような、新しく可能性を見出している分野はあったりするのでしょうか。
小松: もしあれば、既にやっているはずです(笑)。有望と見たら、スピード感を持って立ち上げていきたい。
小松: もうすこ細分化すると、ワークステーションはもっともっと強化したい。MouseProのワークステーションはまだ一部で、これまで強かったプレーヤーが相変わらず強い分野。しかもここは、Appleも競合になってしまう。ただ、大きなプレーヤーがいるのであれば、これにはチャレンジしたいと考えています。
-- 10歳になったMouseProです。次の10年、20歳に向けて成長するために、特に必要なのは何だとお考えでしょう。またお話できる可能な範囲で、製品の計画であったり、方向性などを教えてください。
小松: 大きな方向性はブレないことです。品質、ビジネスサイクルにあわせたモデル展開、今までやってきたことを基本的には踏襲して、しっかりと実行していく。とにかくブレないこと。
小松: 一方で、お客様のニーズや使い方、要求事項は細かく変わってくるので、これにはきめ細やかに、柔軟に対応していく。これをしっかりとやります。
金子: 製品について。モバイルノートの選択肢はもっと増やす方針です。少し具体的な例としては、今回も話に出ていますが、性能ニーズが高まっているので、その結果、ノートPCの平均単価が上がって来ているんですね。方や日本の会社には、いわゆる「10万円減価償却」のニーズが確実にあります。10万円しないのに、性能に満足できる製品は、狙って増やしていきたい。
最後に、マウスコンピューターからユーザーへ
-- そろそろ時間が迫ってきました。とても直近のお話も伺いたいのですが、僕のイメージで言うと、マウスコンピューターという会社は、「ユーザーとの接点」を特に大切にしてきたPCメーカーだと思います。これまで御社はイベントなど、直接の対面を通してユーザーからのフィードバックをダイレクトに得て、それを製品に活かしてきた。営業も顧客と直接対面してニーズを汲み取ってきた。このコロナ禍でリアルイベントの開催や直接対面はとても難しくなりました。今後も果たして戻るのかどうか。これについての見通しはいかがでしょう。
小松: 今現在、一番苦労しているのが、まさにその「接点」です。人と人との接点を持たずに、営業、マーケティングをしていくのが非常に難しい。オンラインで一定のかたちでやっていく努力はしていますが、フェイストゥフェイスで会うことが難しい中で、お客様との接点や、どう興味を持っていただけるのを大きな課題として、現在進行形で考え続けています。
小松: コロナの終息したあとも、テレワークという働き方は今後も続いていくと思います。その中で、オフラインの良さと、それとは違うオンラインの良さが両方あって、これを上手くハイブリッド化できないかと思案しています。オンラインの良さは、直接会うことで密なコミュニケーションができることです。オフラインの良さは移動などの時間がない分、活動量を増やしすことができることです。オフラインの質と、オフラインの機会を組み合わせたい。
-- MouseProの立ち上げから今までもそうでしたが、日本市場では特に、PCメーカーにとって苦難の時代が永く続いてきてしまったかと思います。そこで前向きに進んできたマウスコンピューターのようなPCメーカーは貴重なわけです。そのマウスコンピューターを引っ張ってきた小松社長にとって、あえて言葉にするならば「経営の原点」とは何だったのでしょうか。
小松: まず、まだまだ至らぬことだらけ、と先にお断りさせていただいた上です。私にとっての原点は、思いとしては「使っていただいているお客様の満足」です。
小松: プロダクトインというよりカスタマーニーズという起点。今、お客様が満足してくれている、そのお客様の満足に向けて、しっかり製品をお届けできている。これこそが一番大事であり、これを続けていけるように頑張りたい。会社全体でこれをやってきて、これが少しづつ繋がったから、厳しい中でもなんとかパソコンをやってこれたのだと思います。
-- そろそろ最後です。お決まりではありますが、MousePro購入を検討中のユーザーや、ここまでこの記事を読んでくれた読者に向けて何かメッセージがあれば、是非お願いします。
小松: MouseProは国内工場でのBTO供給体制をしき、24時間サポートもやっています。まだ至らぬ点、弱い点はまだあるかもしれませんが、製品のバランスの良さには自信もあります。是非、一度はご検討いただきたい。試しに使ってみて欲しいと願っています。
金子: MouseProでは、販売店やディストリビューター(販売代理店)との連携も強化しています。例えば、販売店の方から、自分たちが売った製品の保守を自分たち自らでやりたい、といった声をいただき、上手く協力できるよう柔軟に対応させていただいたりしています。MouseProのパートナービジネスの話は増えてきているので、連携施策にも力を入れてきています。販売店やディストリビューターの方も、どんどんお声がけいただきたいです。
金子: そうだ。こちらから、最後にもう一つだけいいですか?
-- はい。まだ大丈夫です。
金子: MouseProが10周年を迎えたことを記念して、PCの購入キャンペーンを開催します。この記事が載る頃には始まっていて、2021年の3月末まで実施予定です。10周年記念のお得な特別モデルなどを販売します。個人のお客様も購入できるので、チェックして欲しいです。
-- 最後に宣伝を入れてくるとは、さすがデキる営業は違いますね(笑)。【PR】MousePro 10周年記念キャンペーンの詳細はこちら→(https://www.mouse-jp.co.jp/business/lp/10th_anniv/)。テレビなんかの番組中の唐突な新ドラマ番宣みたいになってしまいましたが、最後に、本日はありがとうございました。