Engadget Logo エンガジェット日本版 マイクロソフトの2画面スマホ Surface Duo 2、改めてその魅力と課題に迫る(佐野正弘)

2022年1月11日より日本でも販売を開始した、マイクロソフトのAndroidスマートフォン「Surface Duo 2」。「Windows」を手掛けるマイクロソフトから提供されるAndroidデバイスであることに加え、2画面を搭載するという個性が強いスマートフォンだけあって高い注目を集めています。

日本マイクロソフトはそのSurface Duo 2に関するメディア向けの説明会を2022年1月27日に実施し、その開発経緯や特徴などについて改めて説明しました。

説明会ではマイクロソフトでSurfaceの事業を担当するコーポレートバイスプレジデントのマット・バーロウ氏が登壇、Surface DuoシリーズはAndroidを搭載しているものの、電話ではなくあくまで「Surface」であると説明。2つのディスプレイと同社のクラウドサービス「Microsoft 365」を活用し、移動の多いプロフェッショナルに向けた生産性向上をもたらす、モバイルデバイスの境界線を広げるものだとしています。

それゆえSurface Duo 2は360度開閉できるフレキシブルなヒンジを搭載し、2つの画面をさまざまなスタイルで利用できることに力を入れているのに加え、Microsoft 365に関連するアプリをプリインストール。一方の画面で「Microsoft Teams」を使いビデオ会議をしながら、もう一方の画面で資料を見るなど、2つの画面とマイクロソフトのアプリやサービスを有効活用してビジネスを効率よくこなせる仕組みが整備されているのが特徴となっています。

マイクロソフトとしてはあくまで、2つの画面を別々に使うようアプリを最適化していく目指す方針のようですが、それは2つの画面を使った方が仕事の生産性が上がるためだとマット氏は説明しています。実際同社のデータによると、スマートフォンの1つの画面で複雑なタスクをこなすのが困難だと感じている人が4分の3を占めており、2つの画面を使うことで仕事の生産性が平均で42%向上するとのことです。

それだけに、仕事の効率化につながる2つの画面をポケットサイズで提供することの意義が大きいと同社では捉えており、とりわけ公共交通での移動が多い日本ではSurface Duo 2のコンセプトがより“刺さる”と見ているようです。

一方でマット氏は、Surface Duo 2がビジネスだけにとどまらず、エンタテインメントサービスを活用する上でも効果を発揮するとしています。実際「TikTok」や「Spotify」など主要エンタテインメントアプリに加え、ゲームアプリのいくつかもSurface Duo 2の2画面ディスプレイ表示に対応しているとのことです。

ただエンタテインメント系アプリの2画面対応においても、どちらかといえば2つの画面を別々に活用することを重視しているようです。そこにはSurface Duo 2は2つの画面を1つにして使った場合、いわゆる「折り畳みスマホ」と比べるとどうしてもディスプレイ間の継ぎ目が出てしまう弱点があることも影響しているといえそうですが、一方で漫画や電子書籍などのアプリであれば、継ぎ目があっても実際の本のような感覚で楽しめるだけに、アプリ側の積極対応が望まれる所です。

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ちなみに日本では販売されなかった初代「Surface Duo」と比べた場合、Surface Duo 2にはいくつかの進化ポイントもあります。1つは5Gに対応してより高速な通信ができるようになったこと。そしてもう1つはメインカメラの搭載で、背面のカメラが一切なかったSurface Duoと比べると、Surface Duo 2は広角・超広角・望遠の3つのカメラを搭載するなどかなり力が入れられている印象です。

3つのカメラは背面に搭載されていることからヒンジを360度開いて使うことはできず、本体を180度開いて撮影する必要があることから片手で気軽に撮影できないのは難点です。ただその分、一方の画面で撮影しながら、もう一方の画面でサムネイルを確認するなど2画面を生かした撮影ができるのはメリットと言え、この辺りは「LG VELVET」など、専用ケースを装着すると2画面になるかつてのLGエレクトロニクス製スマートフォンと共通しているようです。

2画面スマホといえば従来、どちらかといえば“キワモノ”という見方をする人も多かったと思いますが、それを自社アプリと連携させてビジネス主体に生かすというSurface Duo 2のコンセプトは理にかなっていますし、非常に魅力ある内容だとは感じます。ただ現状、Surface Duo 2にはいくつかの課題もあるように感じています。

1つは先行販売されている海外でのレビュー評価があまり振るわないこと。その要因としては2画面に関連するアプリ動作が不安定であるなどソフト面の問題や、2つの画面の色温度が異なるケースがあるなどハード面の問題が挙げられています。

マット氏は前者の問題について、「マンスリーでアップデートをかけており、だいぶ改善されたと思う」と答えているほか、後者の問題に関しても、違いが気になるという顧客には日本でもサポートで対応を進めるとの方針が示されています。Surface Duo 2を有効活用するには、最大の特徴でもある2画面とそれを生かした機能が重要になってくるだけに、課題解決にはマイクロソフトの継続的に改善に取り組む姿勢が問われることとなりそうです。

そしてもう1つは、携帯各社からの販売がなされていないことです。Surface Duo 2はオープンモデルとしてマイクロソフトの公式ストアや家電量販店から販売されているものの、多くのスマートフォンを扱う携帯4社からの販売はなされていません。

Surfaceシリーズといえば、かつてワイモバイルからLTE対応の「Surface 3」が販売されたことがありますし、最近では携帯各社が5G対応パソコンの販売に乗り出すなどの動きも見られます。それだけにマイクロソフトが、ビジネス活用を重視したSurface Duo 2の販売で携帯各社との協力体制を取ってもよさそうなものです。しかし、同社としてはSurface Duo 2ではオープン性を重視しており、現時点で携帯各社と協力する予定は「ない」とのこと。あまり連携に積極的な様子は見られませんでした。

それゆえ少なくとも現時点ではSurface Duo 2を、携帯各社が提供する端末購入プログラムを適用して安く使うことができず、最も安いモデルでも18万4580円は支払う必要があるのが消費者にとっては痛い所です。それだけに今後、携帯各社と連携に関する何らかの動きが出てくることを期待したい所です。

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