Legal protection and development of the software industry -Weekly BCN+
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2022/02/02 09:00
週刊BCN 2022年01月31日vol.1909掲載 昨年、コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)理事長に就任した和田成史氏が社長を務めるオービックビジネスコンサルタント(OBC)は、ソフトウェア特許を侵害したとして損害賠償請求訴訟が起こされたことがある。最終的にはOBCの勝訴で終結したが、当時、ソフトウェア特許を巡る訴訟は珍しく、ソフトウェア業界は騒然とした。背景には、ソフトウェアを著作権法で保護するよりも、特許法や特別立法で産業財産権として保護するべきという思想があった。私は、ソフトウェア業界の危機であると考え、特許庁や弁理士会から情報収集を行い、ACCS会員企業とともにOBCの勝訴に向けて闘った。 この、いわゆるイエス特許訴訟は1999年だった。その9年前、日本パーソナルコンピュータソフトウェア協会(現ソフトウェア協会)の内部にあったソフトウェア法的保護監視機構が独立してACCSになった。このときソフトウェア協会を所管していた通産省(現経産省)は、独立はまだしも著作権協会と名乗ることは文化庁所管を想起させるもので到底認められないと、ソフトメーカーの社長らを呼び出し、ときには強圧的に独立を妨害してきた。 確かにACCSはソフトウェアの著作権を保護するために独立して社団法人になったが、ソフトウェア業界の権利を守り流通を促進することが真の狙いだ。その目的に叶うなら、著作権であれ特許権であれ手段はどうでもいいと考えている。だから、イエス特許訴訟で私は勝訴に向けて、ソフトウェア業界のために会員企業と共闘したのだ。 当時は、縦割り省庁の管轄を気にする風潮はまだ残っていたかも知れない。でも、時代はすっかり変わった。ACCSは経産省が主導した知的財産戦略にも関わったし、おととし行ったACCSの30年記念パーティには経産省の担当者も出席してくれた。昨年は、ソフトウェア協会の会長を8年務めた和田理事長の紹介で2社が新たに会員になった。 本来のソフトウェア業界の権利保護という目的のために、使える手段を組み合わせる。著作権法にとどまらず、不正競争防止法なども駆使してソフトウェア業界を法律面で支えたい。かつてイエス特許訴訟を闘い、ソフトウェア協会の会長経験もある和田理事長の下、2022年は改めてソフトウェア保護に向けて新たな会員を募っていきたい。一般社団法人 コンピュータソフトウェア 著作権協会 専務理事 久保田 裕久保田 裕(くぼた ゆたか) 1956年生まれ。山口大学特命教授。文化審議会著作権分科会臨時委員、同分科会国際小委員会専門委員、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会理事、(株)サーティファイ著作権検定委員会委員長、特定非営利活動法人ブロードバンドスクール協会情報モラル担当理事などを務める。主な著書に「情報モラル宣言」(ダイヤモンド社)、「人生を棒に振る スマホ・ネットトラブル」(共著、双葉社)がある。